私の話を聞いてください③

けものフレンズ大好き

私の話を聞いてください③

 皆さんは霊感がある方ですか?

 僕は以前は文字通りの0感でした。恐がりでしたが幽霊など見たこともありません。

 ですが、最近人生観を変えるほど衝撃的なことあり、欲しくもなかった霊感を手に入れてしまいました。

 ただし、は本当に霊的なものだったのかどうかは今でも分かりません。

 

 これから話すことはあるアプリが関係しているのですが、もしそのアプリをもっている方がいらしたら注意してください。

 そして、が本当に霊的なものだったのか、皆さんにも一緒に判断してもらいたいのです……。


 これはちょうど秋頃、大学が文化祭で賑わっているときの話です。

 部活にもサークルにも参加していなかった僕は、文化祭期間中はただの長い休みに過ぎませんでした。入学前も文化祭には興味が無く、行ったことはありません。

 しかし、どうしても学生課にいかなければならない用事ができ、僕はその日大学に行きました。

 僕の通っている大学はそれなりに有名な私立大学で、文化祭もそこそこ賑わっており、学外からのお客さんも珍しくありません。むしろ客層は部外者の方が多いかもしれません。

 そんな彼らを尻目に学生課での用事を済ませ、そのまま帰宅しようとしたのですが、不意に屋台の店番をしていた友人に呼び止められました。

 彼(仮にH君とします)にはテスト期間中に大変世話になったので、無視するわけにもいきませんでした。

 H君の話を聞くと、急用が入ったのでしばらく店番を変わって欲しいとのことでした。

 その後の予定もなく、断る上手い理由も思いつかなかった僕は、仕方なくその頼みを聞くことにしました。

 店はチョコバナナを売っており、特に調理をする必要もなく出来た物を売るだけでした。しごく簡単な店番でしたが、逆にそれが理由で僕のような不器用なオタクが店番を任されたのでしょう。

 幸いにもあまり流行っていないようで、客はまばらでした。

 ただその中に変わったグループがいました。

 同じ制服を着た女子高生3人のグループで、前の2人はやたら騒がしいのですが、後ろの1人は黙ったまま、陰気な様子でスマホを見ながらじっと俯いているのです。

 前の2人があれやこれや話しかけてきましたが、後ろの1人はスマホから目を離さず、何も言いませんでした。

 結局チョコバナナは売れず、その時は変わった女の子達だなと思いながら、あくまで店員と客という関係で別れました。

 それからしばらくしてもH君は戻ってこず、予想以上に長い間店番をやることになっりました。

 その間、難解か目の前を通り過ぎる3人を見たのですが、いじめているかのように前の2人は後ろの1人を無視し続けていました。同じ制服を着ていなかったら赤の他人だとさえ思ったでしょう。

 あまりに気になったため一瞬声をかけようかと思いましたが、それはそれで面倒なことになりそうなので、結局止めました。

 ただその変わり、僕の変わりに彼女達に声をかけた人間がいました。

 オカルト好きで最近親しくなったEという友人です。

 社交的で女好きということもあるので、Eはナンパでもしてるのかなと思いましたが、後ろの1人に二言三言話しただけで、すぐに3人と別れました。

 そして僕の存在に気付いたのか、向こうから近づいて来ました。

 Eは「今の3人見たか?」とだけ聞き、僕が頷くとため息を吐きました。

 さらにEは「よく見てみろ、似たようなな奴が他にもいるぞ」と言いました。

 言われて目をこらしてみると、確かにEの言うとおり、暗く青白い顔をしながらスマホを見続けている女子高生と、明るく話す2人以上の女子高生というグループが数組いました。

 制服は様々でしたが、共通しているのは前を歩く子達はおしゃべりで可愛く、後ろを歩く子は暗くずっとスマホを見ているということでした。

 Eが話しかけてきたということは、これは絶対にオカルト関係の話だろうと思い確認したところ、案の定Eは首を縦に振りました。

 ただし、僕が想像していたは全く逆でした。

 以下、僕とEの話です。

「つまり女子高生のグループに、スマホに取り憑かれた霊がまとわりついているということ?」

「いや逆だ。前を歩いている方が人間じゃなくて、後ろを歩いている方が人間なんだよ」

「ええ!? どう見ても逆だし意味が分からないんだけど……」

「最近の子は……まあ俺達もそんな歳じゃないけど、特に女の子は、グループじゃないと何も出来ない子が多い。そしてスマホをずっと見ていないと、心も落ち着かない。けどまあ、スマホばっかり見てて友達なんて作れるわけもない。そんな彼女達のために開発され、爆発的にヒットしたアプリがある。それが今噂の〈友達アプリ〉だ」

「なんか噂で聞いたことはあるような……」

「このアプリは実在しない友達とやり取りをして、周囲に……というか自分自身に1人じゃないと思わせるためのもんなんだ。はっきり言って俺達第三者から見れば結局1人もんに変わりない。けど本人にしてみれば、それで心の平穏が保てるんだよ。そしてあまりに存在しない人間にスマホで声をかけ続けた結果、が現れてしまったというか、あまりに強い妄念が形をもってしまったというか……。とにかくありもしない理想的な、だからといって一切会話ができないアクサリーのような友人が誕生したわけだ」

「怖い話だな……。最終的にどうなるんだ?」

「分からん。ただ彼女達が将来まともな人間関係を築けなくなることは確実だろう。いや、もう現時点で致命的かもしれないな。自分にだけ都合の良い友達って言うのは課金しないで済む分、一度嵌まったら絶望的かもしれないぞ……」


                 〈了〉

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私の話を聞いてください③ けものフレンズ大好き @zvonimir1968

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