僕がいなくなった世界

楠木黒猫きな粉

貴方のいなくなった世界

私はゆっくりと彼の枕元の手紙を開く。彼は眠っている。少しだけ長く眠っているだけなんだ。

少しだけ涙が出てしまうけれど、これを見てしまったら私は泣いてしまうんだろうか?いいや、笑っているだろう。貴方が好きだと言ってくれた笑顔を見せているだろう。だから私は貴方の為に私はこの手紙を読むんだ。


『  拝啓 親愛なる彼女

この手紙を手に取った貴女は今、泣いているかも知れませんね。

けど、僕が好きなのは泣き顔じゃなくて笑顔なんだ。だから君には笑ってこの手紙を読むんでほしい。というかこれ、君以外の人が見たら恥ずかしいね。

まぁ、そんな話は置いといて、これからの話をしよう。僕はもう起きないだろって?そうだね。僕はもう起きることが出来ないだろう。でもね、君のこれからを考えて楽しむ事はできるんだよ?

けど君のことだからお節介だーとか言ってるんじゃないのかな?

でも、僕はやめないよ?だって君を引っ張って行くのが僕の役目だから。

さて、僕が思い付いた未来は四つ位あるんだ。

まぁまぁ聞いて聞いて。僕が考えた内の一つは、僕が生きていて君と一緒に生きているって内容。

二つ目は、あり得ないけど君が僕の後を追うことかな?絶対やらないでね?怖いから……

三つ目は、悔しいけど誰かと付き合うってこと。僕としては本当の本当に悔しいけど、君が選んだんならそれでいいよ!悔しいけどね!!!

四つ目は、君がやりたいことをやりたいままにやって独りぼっちで眠りについちゃうこと。これも、やめてほしいかなぁ。

でも、どれもあるかも知れないし絶対にあり得ないかも知れない。

けど、僕がその答えを見つける事は出来ないんだけどね♪

はい、ごめんない。調子のって音符マーク使いました。

さて、本当に話したい事はいっぱいあるんだけどさ、これ以上話しちゃうと僕が泣いちゃうからさ、続きは夢で伝えてよ。

でも、でもさ、もし僕が生きていたらさ、また君の隣にいさせてくれるかな?

あーあ死にたくないなぁ…



死にたくない。死にたくないよ……まだ君の笑顔を見てたいよ!君の隣で歩きたいよ!でも、僕はもう、寝ているんだね。なら、僕はずっとずっとずっと君の幸せを一番に願っている事にします。

さて、最後に一つだけ

ずっと言えなかった言葉があります。だから僕は最期を迎えた後にこの言葉を送ります。

これからも貴女を……君を愛しています。ありがとう!!!!さようなら!!


幸せを願う人 より』


「……バカ」

やっぱり彼はいつまでも大馬鹿だ。なんでそんなに私が考えてることがわかるわけ!

「なーにが幸せを願う人、だ。カッコつけんなよ。死にたくないとか言ってる癖に。ずっと不安な癖に!バーカ!バーカ!!!この大馬鹿!!!」

なんでよ、なんで起きないの!起きてよ!起きてよ!この大馬鹿野郎!嫌いになるぞ!

「………………それに、なんで貴方が先にそれ言っちゃうの!私だって言えてないっての!このバカ!」

さようなら、なんて悲しいこと言わないでよ!


『僕は、君の笑ってる顔が好きだなぁ』


いつ通りの能天気な声がした気がする。いつも貴方が言っていた言葉だった。

「……なんで、貴方は、こんな不器用な笑顔が好きなの?」


「……もう、次は私の番なんだね」



「ずっとずっと!貴方を愛してます!今までありがとう!さようなら!!」


涙が溢れているんだろう。でも、この涙はさようならの涙だよ。

「なんだよ、この顔。泣きながら笑ってるとか……」


────僕はずっと願っています。貴女が心から笑っていられる事を

────この、夢の中でずっと願っています

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僕がいなくなった世界 楠木黒猫きな粉 @sepuroeleven

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