電装竜騎士団の転生兵【短編版】
雲江斬太
前編 転生兵
第1話 離陸
「ねえ、この飛行機、落ちたりしないよね?」
妹のリナが、カズマの肘をぎゅっと掴んでくる。
「飛行機は滅多に落ちないよ。毎日乗っても事故にあうのは438年に一度なんだ」血のつながらない妹の手をそって包み込んで、カズマは元気づける。「それより、シートベルトはしっかり締めときな」
カズマはリナのシートベルトの金具を確認する。その拍子に、制服のスカートごしにリナの柔らかいお腹に指が触れてしまい、「あっ」と妹が小さく声をあげたが、これは気づかない振りをした。わざとじゃないけど、どきっとしてしまう。それにしても、女子高の制服のスカートって、こんなに短いものなのか? 剥き出しの白い太腿につい目がいき、カズマは慌てて身を起こすと、リナごしに窓の外の景色に目をやった。
羽田発、小松行き、NIA203便は、翼下の双発エンジンを唸らせてすでに地上をランディング中。機種はボーイング
リナが小さく悲鳴をあげ、カズマの制服のズボンをぎゅっと掴む。その手をやさしく両手で包み込みながら、カズマは妹の耳元でささやく。
「大丈夫だよ。坂道を上がっているだけだ。空を飛んじゃってるわけじゃない」
カズマが目を上げると、窓の外を羽田の景色がもの凄いスピードで後ろに流れている。エンジンを吊り下げて垂れ気味だった主翼が、風を受けて上に反り返った。その勢いで、カズマたちの身体が機体ごとぐぅっと上に持ち上げられる。ちらりとのぞくと、リナは首を竦めながらも、窓の外の景色に見入っていた。
ま、この様子なら、大丈夫かな、とカズマは少し安心する。初めての飛行機は、誰でも緊張するものだ。
NIA203便に異常が発生したのは、離陸から20分後のことである。
すでにベルト着用サインは消えており、機内には寛いだ空気が流れていたが、突然始まった細かい震動についで襲ってきた激しい急降下となにかに衝突したような衝撃に、機内のあちこちから大きな悲鳴があがった。
ベルト着用サインが消えてもシートベルトは外さない方がいいと知っていたカズマは、リナともどもシートベルトで座席に固定させたままだったが、何人かの乗客はシートから放り出され、通路を歩いていた人は激しく宙を舞った。
「お兄ちゃん!」リナが両手でカズマの腕にしがみついてくる。
「大丈夫だ。飛行機は空気の中を走るんだ。風の壁や気圧の坂で揺れたりすることがあるんだ」
とはいったものの、この揺れ方、今も続く急激な下降は異常だった。なにが起こった?
ふと窓の外へ目をやると、遥か遠くに青い色の発光体が見えた気がした。
その瞬間、彼の視界は、目の前に白い膜が張られたようにぼやけていった。
「よし! 全員、出撃!」
勇ましい怒鳴り声に反応して、周囲の全員が立ち上がったので、カズマも反射的に立ち上がっていた。
が、すぐに違和感に気づく。
ここはどこだ? なんで、自分はこんな場所にいるのだろう?
カズマは茫然として周囲を見回した。
そこは天井の低い、薄暗い室内だった。広さは高校の教室とほぼ同程度。真正面に黒板ならぬ長大な液晶画面があり、そこに今、気象衛星から送られたきた気象画像みたいなものが映し出されている。室内は席から立ちあがった人間で溢れており、それらが同時に動き出したため、休み時間に入った教室のようにざわついている。ただし、ここで動き回っている奴らの装束は異様だった。
全員が、ぴかぴか光る金属の
「なにやってんだ、バベル。出撃だぞ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます