2日目 第4試合 前編
ジャックが会場に立つと、目の前に現れたのは例の巨人だった。なるほどやはり、勝てる気がしない。今まで人間より大きい者と戦ったことなど、全くないのだから。
ジャックが不安混じりに周りを見ると、ふと奇抜な観客を見つける。着ぐるみだった。
「あ、あの……なんだ。お菓子のキャラクターみたいな奴。」
ジャックは声を張り上げる。
「おぉーい!!あー、あの、昨日の飴……、美味かったぞ!」
「うそつけぇぇぇぇぇ!!!」
──
ダイダラボッチは全速力でこちらに向かってきた。ジャックも剣を出して構える。今回は自分の物とダリオの物、2本を使う。
「陛下の剣、重いな……。」
向かってきたダイダラボッチを斬りつけながら左に避ける。すると、傷口は瞬く間に塞がってしまった。
(俺と同じ類か。いや、一時的な切断はありなようだな。)
ジャックはその後も何度か斬りつけるが、一向にダメージを与えられない。
ジャックは1度身を引いて、相手の出方をうかがうことにした。というのもあるが、相手から放たれる悪臭に耐えきれなくなったのが本心だ。ダイダラボッチはジャックに向かって駆け出し、拳を振り下ろす。凄まじい威力だ。昨日の女──名前はなんだったか──もかなりのものだったが、やはりこちらは外見に見合った力強さだった。
ジャックは地面を軽く撫でる。そして振り下ろされたダイダラボッチの拳をかわす。すると、ジャックのいた地面の砂が舞い上がり、ダイダラボッチの目を潰した。その隙にジャックは連続して斬りつけ、弱点を探そうと試みる。
その時だった──!
突如として、ダイダラボッチの姿が影形なく消え失せたのである。ジャックは困惑するが、すぐに理由が分かった。
(くっ……!?奴め、身体の大きさまで変えられるのか?)
ダイダラボッチは、身体をジャックが気づかない程度に縮め、彼の頭の中に侵入したのだ。ジャックは頭を押さえるが、ふと、観客席で異様な喜びを見せる着ぐるみの姿を見る。
「まさか……。」
ジャックはダリオの剣を真上に放り投げると、ミスティ・カジェルディをかけ、勢いよく振り下ろした。その先は紛れもなく、ジャックの脳天だ!
ズバアアァァァァッ!!!
ジャックは頭から真っ二つになった。無論、アンデッドなので剣が通過し終えた所から、どんどん繋がっていき、傷など一瞬もつかないが。
(クソッ!かわしたか、小賢しい奴め!!)
ジャックは自分のロングソードも宙に放ると、その剣で喉を、ダリオの剣で後頭部を貫通させた。
グシャァッ!!
後ろからの剣に、小さなダイダラボッチを確認する。観客席には動揺する着ぐるみの姿。そして、剣で刺されたままのダイダラボッチに、キラリと黒く光る物を見つけた。
「や、やはりな……!!」
貫通した衝撃に耐えながら、ジャックは笑みを浮かべる。
ダイダラボッチの回復能力は、ジャックにも引けを取らないものだ。なので、出来る限り剣を刺したままにして、傷口が完全に塞がってしまうのを防いだ。
だが相手もこの程度ではへこたれない。ジャックに向かって、拳での攻撃を連続で仕掛けた。不自然な程、さっきよりスピードが上がっている。
「ぐはっ!!」
ジャックはパンチを受けてしまった。僅かながらダメージが通る。
「全くな……。」
賢しい真似をしやがって。ジャックはそう思っていた。
(この試合、俺はこのデカブツに勝つ事は出来ん。コイツの強さは、たかが90歳ぽっちの無力な男ではどうしようもないだろう。だが、自らは手を下さずに己が介入するような細工までし、挙句その為の協力者をむげに扱うとは……。とても感心できたものではないよ。お菓子のキャラクター、言い方は悪いがね──。)
「
ジャックは再び構え、攻撃のチャンスをうかがう。あの光ったもの、アレが弱点やもしれん!奴にいい思いをさせてばかりでは、なんとも不愉快だ。いずれ負けるが、ここは最低限のストレスでも与えてやろう。
ジャックは近づいてくるダイダラボッチをジッと見つめながら、剣を握りしめる。そして来るか!と思ったその時──。
「たああぁぁぁぁいしょおおぉぉぉぉ!!!!!何やってんすかああぁぁぁぁぁぁ!!一気に攻めるっすううぅぅぅぅぅ!!!」
……カノヴァの野次が聞こえた。あまりの声の大きさに、ダイダラボッチは──、
「もう!めんどくさいっす!ダーダーで良いっすよ!」
あ、えっと、ダーダーは驚いてカノヴァを見た。ジャックは恐ろしい顔をしている。
「行けぇぇぇ、たああぁぁぁぁいしょおおぉぉぉぉ!!!」
「うるさああぁぁぁぁぁぁい!!!」
ジャックが怒鳴り、剣を地面に突き立てる。地面には大きくヒビが入った。
「ウィル!!!」
ジャックが叫ぶと、どこからか、前にジャックと戦ったウィルが現れ、カノヴァの腕を掴む。
「はい、カノヴァちゃん退場!残念!!」
「え、ちょ、待ってくださいっすよ!自分は大将の応援に──!」
「その大将が噴火モードだから!これ以上試合を冷ましちゃダメだろ。」
カノヴァはウィルに連行された。
「続けようか。」
ジャックは剣を構え直し、ダーダーは再度拳を振りかざす。
ドォォォン!!
と、ものすごい音を立ててダーダーの拳が地面に叩きつけられる。するとジャックは、その拳を伝ってダーダーの頭の上へと登っていった。そしてあの弱点らしきものを探す。
「どこだ……?あれは──!?」
ジャックはダーダーの手に捕まってしまった。振りほどこうにも、相手の力が強すぎる。
その
ジャックはミスティ・カジェルディで剣を操り、光に向かって斬撃を繰り出す。小さくガンッ!という音がした。
爆音とも言える咆哮と共に、ジャックは地面に叩きつけられた。僅かだが、上手くいったようだ。
だが、その時!
ジャックは驚愕した。ダーダーの──もうやめよう。ダイダラボッチの影が、どんどんと伸びていくではないか!それは天高く伸び、最初は
「冗談だろ……。」
ジャックは戸惑うも、剣を持ち直す。ダイダラボッチは咆哮を上げると、またもジャックに向かって拳を振り下ろした。
そして──。
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