悪戯っ子な悪魔

『ねぇねぇ、知ってるかい?この世界には悪魔がいるそうだよ。』


 真っ青な空に風が吹く。雲を呼び寄せ、色んな形を作り、去っていく。

 木から離れてしまった葉が顔の真横を横切る。


「悪魔?」


 聞きなれたような聞きなれないような響きに少女は問い返した。彼女の表情がおかしかったのか、少年は腹を抱えて笑い出す。少女は顔を歪め、少年の体を軽く叩くと少年は「ごめんごめん」と軽く謝る。


「で?」


 話の続きを話すよう視線で訴えかける少女に少年は手のひらを上げながら話し始める。


『この世界には悪魔が大勢いるんだ。人間のフリをしているから滅多に見つからないんだけど、たまにわかりやすい奴がいるんだよ。 ほら、ゲームのような者達が、ね。悪魔がどんな奴なのか知りたくない?』


「うーん、悪魔かぁ……悪い人じゃなかったらちょっと会ってみたいなぁ」


 優しすぎる君はきっと騙されてしまうねなんて思いながら腹を抱えて少年が笑う。


『ねぇ、もしも、僕が悪魔だったら君はどう反応する? ビックリする? それとも嘘だと思う?』


「嘘だと思うなぁ。だって、そんな簡単に見つかるはずがないじゃん。貴方だって、さっき悪魔は人のフリをしてるって……」


『あぁ、そうだね。うん、そうだよ。でもね、僕は悪魔だよ。ほら、角だってあるよ?』


 ぱっと花が咲いたかのように現れる角。まるでマジックだと我ながら思う。


「作り物でしょ?」


『もう、違うよ。少しくらい信じたらどうなの』


 ふっくらと頬を膨らませてみて、彼女を困らせてみた。

 ねぇ、もっともっと色んな表情を見せて

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る