孤独な彼に救いを


 天にはきらきらと星々が輝いている。そんな星の煌めきが一つ、流れ落ちる。流れ星を見たら願い事を言うと叶えられるとか。人はそんな迷信を信じた。奇跡が起こると信じて。


しゅよ、お体に触ります。どうか、中へ」


 背に真っ白な翼を生やし、頭の上では金色に輝く輪っか。まるでティアラと王冠を混ぜ合わせた輪っかは美しい芸術性を秘めており、一般人が見ても美しいと思えるものであった。


「ねぇ、ミカエル。風の噂で聞いたのだけど、……流れ星を見たら願い事が叶うって本当?」


 さらさらと銀色の髪が揺れる。真っ赤な瞳は敬愛する人物を捉え、優しい声音で彼は返事をする。


「人間達の間ではそのような話があります。……願掛けのようなものかと」


 星々を見て彼はこう言う。


「さっき、流れ星を見たんだ」


 美しく気高く、しかし儚く悲しい背中を見る。


「願い事を?」

「うん、言った。……でも願掛けだからお門違いだね」


 ふふと少し笑った。でも、彼は振り向かない。星々を見上げるその横顔はどこか悲しい表情をしている。彼は一体何を願ったのだろうかと天使は考えた。


 遠くから足音が聞こえる。慌てたような音に天使は何事かと出入口を凝視する。そこからあわてて入ってきた天使は難しい顔つきで、


「城内に侵入者が」

「侵入者だと? ……一体どこから」


 ミカエルのつぶやきに天使は恐る恐る、


「空……からです」


 と。

 言葉を聞いたミカエルは天使を睨み、「そんなはずがない」と力強く言う。

 すると、今まで沈黙していた彼が、振り向き天使の顔を見る。


「アダムの子孫?」

「……は、はい! 女の子です!」


 天使の返事に彼は優しく微笑み、


「僕の元に連れてきて」

「──御意!」


 慌てて来た道を戻る天使を眺めながらミカエルは「なぜ……ここに」と問いかける。


「僕の、……未来の妻だから」


 彼が言った言葉にミカエルは息を飲んだ。そして、の言葉、すべてがことを再確認する。

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