第12話 エビピラフ
「ほほぉ。新しいコメ料理か……」
新しいコメ料理。それは「人狼」アルフレッドにとって大いに興味をそそらせる料理だった。
「ええ。出せるめどがついたんで新しく出そうと思ってるんですよ、どうします? 今からでも出せますよ。もちろん代金はいただきますけどね」
「決まってるだろ。もちろん食う! 出してくれないか?」
「かしこまりました。少々お待ちください」
そう言って店主は奥へと引っ込む。
彼女はドライアイスが詰められたクーラーボックスから冷凍のエビピラフを取り出し、皿に盛る。電子レンジで加熱すること、しばし。
エビピラフが出来上がり、アルフレッドに出す。彼はこの料理を食べる客第1号となった。
「お待ち同様でした。エビピラフとなります」
器に盛られたのは数種類の野菜と赤いエビと共に盛られたコメ。少し黄色がかっているそれはかすかにバターの香りがする。
「何だこりゃ。
「順番が逆なんですよ。チャーハンは炊いたご飯を炒めるんですけどピラフは炒めたご飯を炊いて作るんです」
「へー……」
料理に関しては無学なアルフレッドにとってはどうでも良かった。
彼にとって料理に関して言えば「
スプーンでライスと共に野菜をすくい、口に運ぶ。
野菜のうまみを吸ったコメは口に含んで噛みしめるたびにうま味を惜しげも無く吐き出す。
加えてバターの風味とコクが口と鼻に好印象を残して舌の上にハーモニーを奏でる。
それに混ざった野菜も、決してうま味を吐き出した出がらしというわけではなく、炒められたことで甘みと噛みごたえ、
それにバターの香りを残していてこれだけでも十分一線を張れるものであった。
2口目は気になっていた赤く丸まった物をすくう。エビだ。炒められて鮮やかな赤色になったエビだ。
(……エビなんて出すのか?
エビというのは鮮度が非常に落ちやすく港町でしか出回らないものとされている。
……とはいえ同じように鮮度が落ちやすいサバを使った料理である「サバの味噌煮」なんてものを出してくる店だから
まぁ大丈夫だろうと大口を開けてかぶりつく。
「!!」
その白い身はプリプリで適度な弾力を残して切れる、まさに港から揚がったばかりの新鮮そのもの、と言っていいほど鮮度がいい。
それがかすかに香るバターの味と香りに包まれて、美味い。
彼の手は止まらない。黙々とスプーンでピラフを切り取り、口の中に移す作業を繰り返していく。
皿に盛られた料理が次々と胃袋の中に納まっていった。
「ふぅ」
皿には米粒ひとつ残さず食い尽くして満足げに息を吐く。が、彼の胃袋にはまだまだ余裕がある。
「オイ店主! このピラフとか言ったか? もう1皿出せるか!?」
「はい出せますよ。少々お時間をいただければお出しできますよ」
「よし来た! もう1皿頼むぜ!」
結局彼は3皿のエビピラフを完食したという。この日、光食堂に新たなメニューが加わった瞬間であった。
【次回予告】
それは光食堂の中ではクセが激しくてほとんど出されない料理。だがそれに食いつく客もいた。
第13話「カレーライス(激辛)」
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