鍵
帰宅部ってなんだよ。
勝手に変なレッテル貼りやがって。
私はひとりの時間が好きなだけ。
スポーツにバンドに恋愛。そんな人と触れ合う事は御免だ。
蒸し暑い帰りの電車。
膨らんだ胸ばっかジロジロ見やがって。
こっちは好きで女子やってんじゃねーんだよ。
どいつもこいつも携帯ばっかいじっちゃって。
まぁ、私も本ばかり読んでるから同じか。
どこに視線やったらいいのかわからないし。
鍵を開ける音は好きじゃない。寂しい気持ちになる。
母親は夕方まで何処かで働いてる。
まるで夜の街に出かけるような厚化粧。ほろ酔いで帰って来る。
子供の私にはわからない世界で働いているのだろう。
ママはいつも通りほろ酔いで帰って来た。夕食を作りながらビールを飲んでいる。
「エイダ、勉強ばっかりしてないでママの相手してよ」
エキセントリックな母親は娘の勉強より寂しさを紛らわしたいのか。
こう見えて素直な私は、いつも話を聞く姿勢を見せる。
「パパ、浮気してんのよ。いつも午前様で。しかも酒飲んでないのよ?」
また午前様って言ってる。娘に愚痴る母親ほど惨めな存在はない。
タブレットで視線を隠しながら頷いてれば、ママのストレスも和らぐと思えば楽なものだ。
多くの事はネットで学んだ。大人は気付いてないだろうけど大抵のことは知ってる。
親父の浮気も少し調べればわかるだろう。
まったく便利な世の中だ。
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