家族アノマリー

-私-

「午前様」の意味がわからなくて検索した。

由来は御前様らしい。

なるほど、よくできたイヤミだ。

学校の彼奴らには考えもつかない、よくできたディスり。

今日も眠れない夜が来る。明日の我慢を考えると不安になる。

日付が変わっても丑三つ時を回っても眠気を上回る動悸が五月蝿い。

親父が帰って来た。

午前様だ。

少しの安心と物音が眠気を強めてくれた。

朝7時25分。

今日は4時間も寝れた。ママの淹れた珈琲は眠気を覚ましてくれるが、苦味を我慢できるほど大人じゃない。

ミルクを多めに入れてパンを流し込む。

さて…行くか。

親父は朝からスマホをじっと見てる。

女子高生じゃあるまいし。新聞読めよ。

通学は苦痛だ。

地獄へ向かう罪人のように脚が重い。

幸い、私立に通う私は電車の時間が大半だ。

私立中学に入学することが苦痛から逃げる唯一の道だった。

でも、それは幻想だった。

場所は変わっても自分が変わらなければ同じ歴史を繰り返す。

この3年間もまた…。

勉強をする時は無心になれる。

ただひたすら、機械的に暗記をすればいい。

人と話したり気を遣ったり答えのわからない問題と向き合う必要がない。

休憩時間なんていらない。

ノンストップで授業が続けばどんなに幸せだろう。

奴等はそんなスキマ時間にやって来る。

大人は想像できないだろう。こんなにシンプルで陰湿で残酷な嫌がらせを。

子供は天才なんて言うけれど、ホント、そうだね。

この豊かな想像力に嫉妬すら覚える。

なんで生鯖がカバンに入ってんだよ。

しかも腐ってんじゃん。