第三十三話 プロポーズ  Sideアルフレッド



 Side アルフレッド





 「アルフレッド様、りりしくなられまして。」





 アルフレッドとローズは隣国へ招かれた。ロバートの結婚式に夫婦で招待されたのだ。そこでアルフレッドは、遠い親戚と出会って挨拶をすることになる。アルフレッドはローズを妻として紹介して回った。ローズは今日も鮮やかな朱色のドレスを着て、長い髪の毛を高く結わき、立っているだけで目をひく艶やかさである。それに比べ、アルフレッドは妻よりまだまだ背が足りなく、体も大柄ではないため、見劣りするのはわかっていた。


 しかし、ローズはアルフレッドの片時も傍を離れなく、まだ外交になれないアルフレッドをサポートしてくれた。本当に心強い、妻だ。


 ロバートと久々に再会して、ロバートの婚約者とともに4人で会食もした。ロバートの婚約者は魔術学院の同期生であり、ローズとも知り合いのようだった。とても感じのいい人で、ローズの昔の話を聞きながら、会食が終わった。そこで女同士で積もる話もあるだろうと、男性陣は男性陣で分かれて、次の日は会食をした。



 「え、アルフレッド…。プロポーズしていないのかい?」


 「うん、最初から決められた結婚だから。」


 「いやいや、だめだよ。形式は大切。形から入る結婚もあるだろうから。何だったら、ここに滞在している間にしたらどうだい?城から見える夜景は絶景だよ。ぼくもそこでプロポーズをした。おすすめポイントだ。」


 「でも、迷惑じゃないかな。ローズはぼくのことどう思っているかわからないし。」


 「まあ、男としては認識されてないだろうね。でも、プロポーズを切っ掛けにまずは意識してもらうことが大切じゃないか?このままだったら仲がいい姉弟の関係になってしまうよ?」


 「ローズに嫌われるくらいなら、それでもいいよ。」


 「情けないなあ。」




 その件を聞きつけたルボワは、アルフレッドにプロポーズの重要性を説いた。そして婚儀のとき、ローズを一人きりにしてしまったことのお小言をくらった。アルフレッドは、振り返れば夫婦として何も態度に表してなかったことを反省した。ルボワのお小言とロバートのお膳立てもあって、アルフレッドは今までの不義理から挽回を少しでもしたいと、ダメ元でプロポーズをしてみようと思った。もう結婚をしているので、今更ではある。一応は傍にしてくれるのだから、嫌われてはいないとは思う。だが、絶対の自信はないといえる。ただ、アルフレッドの気持ちを伝えるにはいいチャンスかもしれない。これから先チャンスなどないかもしれないのだから。



 改まって言葉を伝えるための、とっておきの口実もあった。実は、前にプレゼントしたブローチが壊れてしまったとローズに言われた。出来れば修理してほしいと頼まれた。ドラゴンの戦いの最中もブローチを身につけていたローズ。お守り程度の効力しかないものだが、ローズを影ながら守ってくれたのはブローチだった。それだけ大切に持っていてくれたことが嬉しい。このブローチを改良して、何かプレゼントにしたいと考えた。


 それから数日、アルフレッドは隙間の時間をみてプレゼントを用意した。もちろんプロポーズの予行練習も何度もした。鏡の前で、ローズに言う言葉を繰り返してみた。


 その日は、朝からロバートと婚約者の婚姻の儀があった。晴れていい日だった。


 そして夜も晴れて、空気がすんで星が空で輝いていた。夜景が綺麗な、バルコニーでローズを呼び出したアルフレッド。

 手には一輪のバラと、指輪を持っている。まさに一世一代のプロポーズを前に緊張をしている。




 「アルフレッド、用事って何?」



 アルフレッドがハンナに言付けを頼んだ。ローズはそれを聞いてバルコニーへ来た。不思議そうにアルフレッドの前に立つ。



 「ローズ、あの……。ぼく………。これ!」



 アルフレッドはロバートと打ち合わせをして、いろいろプロポーズを再現してみたのだが、やはりいざ本番になれば頭が真っ白だ。言葉が出てこなかった。ローズを前に恥ずかしさが増してしまい、バラの花と指輪を差し出すだけだった。プレゼントをもつ手が震えてしまう。



 「まあ、綺麗!ありがとう。ブローチを指輪にしてくれたのね。」


 「う、うん。」



 言わなきゃ、言わなきゃとアルフレッドは心の中で繰り返した。



 「ローズ、ぼく君にいいたいことがあるんだ。」




 「え、何かしら?」



 ローズは受けとったバラを見つめて、バラの香りにうっとりと目を細めた。

 そして赤い宝石がはまった指輪をそっと手にして、アルフレッドに視線を向けた。

 アルフレッドは、頭が真っ白になりながらも何度も繰り返した言葉を口にした。




 「結婚してください!!!!」



 ローズはびっくりしたように目をパチパチと瞬かせた。

 そして少し考えてから、首を傾げる。




 「結婚、している…けれど?」


 「そ、そうなんだけれど。これからも、ぼくはローズと一緒にいたいから」




 ローズは指輪と花をもう一度見返した。夜景が広がるロマンチックなロケーションといい、プレゼントといいこれがプロポーズだと判断したようだ。ローズも状況を判断するのに、時間を要しているようだ。しばらく無言のまま立ちすくむ。アルフレッドはローズが何も言わないことに、不安が募る。そしてアルフレッドは心配になってローズを見上げた。


 

 「ローズ?」


 「アルフレッド様。アルフレッド様は、わたしたちの婚姻についてどう思っていますか?」


 「ぼく?」




 ローズは逆に質問を投げかけてきた。ローズの瞳を見ると真剣さが伝わってきた。



 「ぼくは、最初は結婚に興味がなかったよ。だから、ローズにはたくさん嫌な思いもさせたと思う。でもローズがぼくと結婚してくれて、よかったと思っている。ううん、ぼくのお嫁さんはローズしかいないと思う。こんなぼくを支えてくれて、優しくしてくれて。ぼくは毎日が楽しい。」




 ローズはゆっくり微笑んだ。そして小さく頷いた。




 「わたしも同じ事を思ってる。」


 「本当!?」


 「ええ。夫としては、……今後の成長を楽しみにしているわ。お膳立てしてくれたのはロバート?」


 「ローズは何でもお見通しだ。そう、ちゃんとローズにプロポーズしてなかったから。ぼくの気持ちを伝えたかった。」


 「ありがとう…ゆっくり大人になっていきましょう?これから時間はたくさんあるのだから。」


 「うん…、そうだね。あ、そういえば…。ルボワから聞いたけれど。この近くの街にスターの劇団がくるらしいんだ。帰り道そこに寄って、公演をみていかない?」


 「素敵ね、一緒に揚げた鶏肉も食べていきましょう?ルボワとハンナも一緒に。」


 「いいね!」



 ローズとアルフレッドは、これからの予定を楽しく話し合った。

 楽しい日々がこれからも訪れる。ローズと一緒にいれば、きっと辛いことも悲しいことも乗り越えていける。アルフレッドは、未来は明るいと初めて思えるようになった。


 キラキラと輝く夜景と、満点にある星空。暗い夜でも、光は見える。アルフレッドはやっと長いトンネルからでることができたと思えた。



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