2~5

「あの~ 勇者様?」


 勉強中の俺に、金髪のおねーさんが話しかけて来る。


「ん? ゆうしゃ? 俺の事?」


 今いるだっだ広い部屋には俺とこのおねーさんしかいない、どうやら俺を誰かと間違えている様だ。


 俺は一馬であってゆうしゃさんではない、今やっている方程式を解いたらおねーさんの誤解も解いておこう。


「はい、勇者様はどうやってここまで来たのでしょうか?」


「え? そんな事気になる? 普通に階段を上って来たけど?」


「あ、すみません。何分静かだったもので、争うような音も全くしなかったもので…」


 争う? 静奈とは確かに週3くらいで喧嘩してるな。


「今日は機嫌がよかったんだよ」


「機嫌!? さ、左様でございますか」


 そんな、よく分からないやり取りをしていると。


「お兄ちゃん、ご飯出来たよ!」


 と、階段の下から晩御飯のお知らせが来た。


「今行く! って事で机ありがと」


「あ、いえ、とんでもありません」


「ところでさ」


「はい」


「ごはん食べてかない?」


 ここで(自分の家)知り合ったのも何かの縁、折角なのでおねーさんを晩御飯にお誘いしてみた。


「よ、よろしいのですか?」


「うん。俺ん家さ、両親共働きで海外に行ってて、家には俺と妹の静奈しか殆どいないんだよね。だからちょっと寂しくてさ。もちろんそっちの都合もあるだろうし、良かったらでいいんだけど」


「是非お供させてください!」


「お、おう…」


 間髪入れずに凄い気迫で即答してきたな。我が家のおかずに多大な期待をしているのだろうか?


 冷凍食品だったらどうしよう?

 

 ま、いいか。


 てなわけで俺と…


 あ、名前知らないや、一応聞いとくか。


「おねーさん、名前何て言うの?」


「失礼しました勇者様。まだ名乗っていませんでしたね。私はエリザベスと申します」


「エリザベスさんね。俺は一馬。よろしく」


「はい、よろしくお願いします勇者様」


「……」


 だから一馬だって… 後でそこんとこちゃんと説明しとかなきゃな。


 とりあえず晩ご飯を食べに俺とエリザベスは台所に向かった。


 台所に向かう途中、エリザベスは周りを超キョロキョロしながら見回していた。


 THE洋風お姫様。


 日本の建物というか、造りが余程珍しかったのだろうか。


「静奈~、ご飯、もう一人分用意できるか?」


「え、いいけど誰か来るの?」


「この人」


 と、隣にいるエリザベスを紹介する。


「は、初めまして、エリザベスと申します」


「ブッ! ホッ!!」


 静奈は飲みかけ中の牛乳を俺の顔面に吹きかけた。


 俺は肉体的ダメージを1、精神的ダメージを3受けた。


「ちょっとお兄ちゃん! 牛乳がもったいないじゃない!」


「お前のセリフはごめんなさいだと思うんだが?」


「だってお兄ちゃんがいきなり女の人連れてくるんだもん。しかもこんな美人で、こんな外人さんで!」


「なんか最後のは悪口に聞こえなくもないぞ」


「あ、初めまして、私はこいつの妹で静奈って言います。お兄ちゃんとはどんな関係ですか?」


 牛乳を吹き掛けた俺を無視して、静奈はエリザベスと話を始めた。


 全くもって許せぬ行為だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る