黙認
碧靄
想起
1.
帰りの電車の中でふと子供の頃を思い返した。
幼い頃は身体が弱く病気を患いがちだった。その影響もあって家に閉じこもっていた。
好きなことは絵本を読むこと。もうひとつは折り紙や小物を作るのが好きだった。一度集中すると時間を忘れるくらい没頭した。
ものを作っているときは自分でも驚くほど集中力を発揮した。ことに勉強には働かなかったが、図画工作や家庭では自分の右にでるものはいなかった。風景模写をしても誰より細かい部分まで描ききっていたし、裁縫も一部分のほつれなくエプロンを仕上げた。
幼いときから小物をつくったりしているせいか、手先が器用なのもある。しかしやはり手を動かしてものを作るということにわけもなく没頭するのだと思う。ものを作っていると完成形が徐々に見えてはやく完成させたいと気持ちが逸ってくる。それと同時になるべく納得のいくものを、と自分のおぼろげな想像に近しいものを望んでいた。
矛盾するようだがその気持ちがない交ぜとなって突き動かされるようにして手を動かす原動力になっていた。だから比較的一人ですごすことが多かったように思う。
幼少、小学生時代をそのようにすごし、気付けば中学に上がる年齢になっていた。
高学年に上がるにつれて協調性を持ちなさい、とやんわりと先生や親からたしなめられていたこともあり、中学にあがってから部活に入ろうと思い立った。周囲に諭されるのが面倒にかんじたこともある。せっかくなので部活は手芸部に入った。
ただし、この部活は部活動の強制入部で使われる隠れ蓑らしかった。公立の学校ならよくあるらしい。だからほかのメンバーはまれに、部長はたびたび部室に来るくらいだった。
作るものはビーズを使ったアクセサリーやケーキや動物を模した小物といったところで、ほかのメンバーがやってこないことを利用して、よく遅い時間まで没頭しては母親を困らせていた。
その母親といえば趣味で作っていたことはあったが私ほど過剰に小物づくりへに興味を抱いていたわけではなかったらしい。わたしはそれを幸いに思い、昔母が集めていたらしい布や道具を拝借してはよく作っていた。材料費が浮くので助かっていた。母からはべつに咎められたことはない。
中学でも友人との親交は級友という枠からでなかった。見知っていた顔も多かったし、柄の悪い人種に目を付けられても困るのでなるべく目立たないようにしていたからかもしれない。
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