No.2

 目を覚ます。


 そこには石造りと思われる巨大な空間が広がっていた。


 周囲には同じくこのゲーム世界に入ってきた人と思われるもの達が次々と現れてて、せわしなく動き始めている。


「よう、小奈美か?」


 聞き覚えのある声、もちろん知らない人物ではない。

 見た目は完全に変わっているが、声からして一緒にこの世界にやってきたゲーム研究会の一人、天堂仁てんどうじんだろう。


「あら、ずいぶんとマシな見た目になったじゃない」


「お前はそこまで変わっていないんだな」


 ここに来る前はどこにでもいるような普通の丸顔の男の子だった彼は、すらりと身長が高くなっており、おしゃれにも眼鏡まで掛けている。


「私はやっぱりこの色が好きだからね。顔の形を整えた以外はそんなに変わらないようにしたのよ」


 そういう自分は来る前とは一切顔を変えていないほど見た目は同じである。


「とりあえず先にあの二人を探すか」


「そうね」


 一緒にやってきたのは四人。小奈美以外は顔も姿もすっかり変えているはずなので、探すのは一苦労しそうだ。

 そう思って周囲を一周ぐるっと見渡したときだった。


「あっ、あれ小奈美達じゃない?」


 と少し遠くから金髪ツインテールの女の子が指を差してやってきた。

 その隣には男か女か分からない様なかわいらしい少年が立っている。


「噂をすれば見つけたね」


「案外早くて助かったよ」


 仁と笑みを交わしながら、二人は駆け寄ってくる残りの二人を出迎えた。


「んー、小奈美ったらあんまり変わってないじゃない!おかげで分かりやすいけど、少しくらいひねらなかったの?」


「いいのよ、それよりも金髪になれてよかったじゃない」


「ええ、本当に!あたし嬉しくてしょうがないわ」


 本当に嬉しそうに喜んでいるこの子は出雲幸江でぐもさちえ、そしてそこの一人は道武士みちたけしといい、これで全員が揃ったことになる。


「取りあえずどうしよっか、まずはいろいろと確認をしておく?」


 ここで武士が提案を下す。


「そうだね、それが良いかもしれない」


 と今度は仁。二人ともここに来る前とはずいぶんと姿も調子も変わっているので、少し戸惑ってしまうが、まあしばらくすれば慣れるだろう。


 というわけで、早速説明にあったように腕に付いているナビゲーターストーンなるものを起動させる。


 こればかりは全員同じものであり、代わり映えがないものだが、逆に言えばこれがこの世界にやってきた人であることを示し、プレイヤーであることを分かりやすくしている。


 ストーンが起動し、モニターが腕の上に表示される。


 大まかに分かれて表示されているのは、上から順にユーザー情報、持ち物、対戦戦績及びポイント内訳、フレンド・パーティ、便利機能、オンライン情報、ゲーム説明書の七つであり、モニターの右上にはポイント数が示されている。


 今は始めたばかりなのでゼロであるが。


「ふむ、これだけあると確認することは多そうだね」


「そうね、どうせこの世界で暮らすことになるんだからゆっくり確認しておきましょ」


 四人は息を合わせるように頷くと、どこか空いているスペースを探して移動し、その場に固まって情報を確認し始めるのだった。


 こうして私たちの異世界ゲームの人生は始まったのであった。

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