エピローグ

 愛矢です。

 事件が解決し、わたしたちは日本に帰ることになりました。

 ニューヨークを発つ前日、アイリーンとジョシュアがホテルを訪ねて来ました。

 ジョシュアはアイリーンのボディーガードとして、また一緒に暮らせることになったんだって。まだ色々と大変なこともあるだろうけど、二人ならきっと大丈夫だよね。

「ありがとう。さようなら」

 アイリーンは涙を浮かべて、わたしたちの手を順番に握りました。

「また会いに来るよ」

「――約束よ、アヤ」

 ジョシュアはわたしに疑ったことを詫び、古藤先輩に「秘密は守る」と誓ってくれました。先輩はあくまで、何の話かわからない、というような顔をしていたけれど。

 でも、先輩がアイリーンの家をすぐに逃げ出さなかった本当の理由は、あの家の庭園の花だったんじゃないかと思います。だって先輩が言っていた例のものって、アイリーンの屋敷にあった、花の苗のことだったんだもの。アイリーンのお父さんが門の外でジョシュアと話している時、愛弓と武居に取って来させたんだって。

「それって泥棒じゃないの?」

「慰謝料だよ。おれを何日も閉じ込めたんだ、これくらいもらって当然だ」

「盗んだりしなくても、くださいって言えばくれたんじゃないかな」

「かもしれない。けど、めんどくさいじゃないか」

「……」

 先輩ってば……。

 アイリーンの家に閉じ込められている間、きっとこっそり邸内を歩き回って、花の物色をしていたんだろうな。

 とにかく、わたしたちは無事に日本に戻って来て、それからもう一週間が過ぎました。父さんからもばっちりお駄賃をもらった先輩は今、意気揚々と新しい花壇作りに励んでいます。

 さあ、わたしも手伝いに行かなくちゃ。

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