人形賛歌~僕と世界と人形と~

際城 北居

第0話 始まりは終わりではない。

2135年。発達しすぎた世界は、超常を発明。「ドール」と命名。2137年、ドール、ランダムに選別された人間に擬似的超常、「イヴ」を授ける。2140年、日本政府は、ドールとイヴを持つ人間を使った軍事国家を制作。「新日本帝国」と改名。そして、この大規模国家改造を皮切りに、全世界で軍事国家化が進行。2143年、政府の方針に不満を持つ人間の急増。そのような人間間での組織化が進む。2144年、平和連合「アンチマニュアル」の成立。この物語は、アンチマニュアルと、政府の戦いを描く物語である。


2145年、春。私立上木高校は、本日が入学式である。もっとも、脳に直接チップを埋め込むことによって「勉強」が必要なくなったこの時代では、高校という存在は不要に思えるが、コミュニケーションの場として、必要であるとも言われている。まあ、

コミュニケーションすらも必要ない世界になったかと言われれば頷く事は出来ない。

2136年、実例としてコミュニケーションを完全になくした状態はあった。しかし孤独死者数の異常なまでの増加により、すぐに終了。高校という存在が今も続いているのはこの事が理由の一つである。そして、そんな高校の、1年3組教室内、ランダムに振り分けられたと思われる席順で、一人の男子生徒が席に着いた。しかし違和感に気付いたのだろうか、きょろきょろと周りを見渡す。それもそのはず、教室内には彼以外の誰もいないのだ。教室内を見まわしていた少年は、黒板に書いてある文字に気付く。「入学式のため、体育館に集合!」と書かれていた。その横には、「9時30分まで!」との文字も。現在時刻、9時28分。少年は慌てて席を立ち、教室を出て行った。この少年の名は、幽零 かすれ なくし。この物語の主人公である。

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