バレンタインデー

彼がお邪魔しましたも言わずに性急に立ち去り、バスタオルを隔てたベッドから温もりが感じ取れなくなったとき、私はチョコレートを湯煎して溶かしていた。

たくさんのティッシュが入ったプラスチックの黒いゴミ箱の中からコンドームを拾い上げる。周りにしがみつくティッシュを指でつまみゴミ箱に返す。それの中には白い液体がどろりと溜まっている。拍子抜けするほど少ない。彼はこのたかが3mlそこらを排出するために、ただ必死になって腰を打ち付けに朝から私の家に来たのかと思うとひどく滑稽だ。時刻はまだ11:00。

彼は嫌だと泣く彼女を同じように貫いて同じように必死に腰を振ったに違いない。たかが3mlのために彼女の内部を傷だらけにして血を流して。かつて彼女の内部をボロボロにした肉棒が今まで入っていたコンドームの外側には私の愛液がべったりとついている。故意にほどけやすく結んであったコンドームの口を解き、湯煎したチョコ、生クリームを混ぜたボウルの中に子種を流し入れる。ハンドミキサーで混ぜると、すぐに生クリームに混ざって色が見えなくなってしまった。甘いチョコの香りは全てに蓋をし、先ほどとなんの変化もないように見える。

これから会いに行く彼女はどんな顔をしながらこれを食べてくれるのだろうか。美味しいと言っていつものように笑ってくれるのだろうか。そのあと喜んで私にキスをしてくれるかもしれない。美味しさを共有したくて口移しでチョコをくれるかもしれない。一度は私の粘膜に0.03ミリまで近づいた精液を私は再び口に入れることになるのだろうか。

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