夏は嫌い

すっぽんもどき

第1話 小さい時は好きだった

夏は嫌いだ。

暑いし、汗でベトベトになるし、体がだるくなってやる気が失せる。

でもそんなのは、おまけみたいなもの。

嫌いの本当の理由は、高校野球が始まるから。

高校球児が甲子園を目指す、夏が嫌い。

昔は夏も野球も好きだった。

汗を流すことに嫌気が指すことはなく、野球はプレーするほど、難しさに面白味を感じてどんどんハマっていった。

甲子園には出れなくてもいい。

野球をずっとやり続ける。

それだけで幸せ。


その感情が変わったのは1冊の本に出会ってから。

その本はフィクション小説だった。

内容は、19XX年に規定が変わり、女の子でも甲子園を目指すことができ、女の子が甲子園を目指す物語。

それを読んで、私は叶いもしない夢を見た。

「甲子園のグラウンドでプレーしたい」

規定が現実でも変わることを願った。

毎日、毎日神様にお願いした。

でも神様は他の人の願いを聞くのに忙しかったらしい。

「女子は野球部には入れないんだ」

と。

高校生になって先生から告げられた言葉。

言われると予想はしていた。

だけど、その言葉の重さは予想以上だった。

「マネージャーなら募集中だぞ」

先生は何もわかっていない。

「マネジメントしたいんじゃなくて、私は野球がしたいんです!」

結局、野球部に入れては貰えず。

私はやりたかったことを嫌いになった。

野球なんて、見たくない。

野球なんて…嫌い。

野球がテレビで話題になる夏が嫌い。




そんな中、私は一人の青年に出会う。



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