君 が い な い 日 。

Maia

第1話 雪 。




「何見る?」


「私あれがいい!今日公開の。」


「いいよ。えーっと次の公演は…。」



友達同士で遊びに来ている女の子達。




「面白かったな。」


「うん。また見に行こうね。」



はにかみながら笑う恋人達。





目の前をいろんな人が通り過ぎる中、僕は一人。



小さな映画館の前にある小さな時計台。


その下にある椅子に座っていた。





「また君か。待ち人は来ないのかい?」


「あっ、はい。」


そんな僕に、この映画館の店長がいつも話し掛けてくれる。



この会話も、これで何回目だろう。




「もうすぐ閉店だよ。」


「…はい。」


冬の冷たい風で、吐く息が白く染まっていく。



寒さでマフラーに顔を埋めて、コートのポケットに手をいれた。




帰らなきゃ。




映画館に背を向け、家に帰る。




積もっている雪に、僕の足跡を残して…。






やっぱり、どんなに待っても君は来ない。


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