第13話 時代はリーマンショック前夜
僕が、のらりくらりと自分役員化の準備を進めている最中、業界界隈はそれなりにバブリーな景気を謳歌していたようです。初めて会社経営の側に立ったので、その時代の景気がいいのか悪いのかなんて、その時は全く分かっていませんでした。
営業活動もさほどに行っていませんでしたし、大体一つの仕事が終われば次の案件の話が舞い込んでくるような時代。丁度任天堂の主力携帯ハードがABGからDSに変わって、DSバブルがあったんですね。開発会社でありながらプログラマを抱えていない体制でも、マネジメントと企画、デザイン、を武器に十分戦えた時代です。
しかし長続きはしませんでした。
2008年夏、アメリカで市場最大規模の投資銀行倒産と云う事件をきっかけに、じわじわ日本でも影響を食らい始めます。
日本はたまたまサブプライムローン周辺の債権とは無関係の状態だったこともあって、直撃のダメージは弱かったとされています。この頃で僕達の会社は社員数30名程度にまで増えていましたが、それでもまあ超零細企業の一つに過ぎません。リーマン・ショックの影響なんて毛ほどもないと思っていました。
当時のクライアント様は、大手玩具メーカーのT社とK社です。我々もやっと年商で2億円超えて来たなーというタイミングでした。各銀行もこぞってプロパー融資の申し入れをしてくる感じ。何せ、設立から5年くらいは、売り上げも利益も急角度の右肩上がりでしたからね。そら貸したがるわ。
現金で常に3000万円くらいを持ちながらお金を回している感じだったでしょうか。
リーマン・ショックなんてキャッチーな言葉がマスメディアを跋扈した夏が終わり11月の下旬、突然メインクライアントの2社から訪問したいとの打診を受けます。次の仕事も大枠が固まり始めていたので、その確認かなと思い社長と僕の二人は同日に大手2社の訪問を受けました。なんと事業本部長まで来社されたのです。なにこれ。なんで?
簡単に云うと、リーマン・ショックの影響を懸念して、翌期以降の販売計画、開発計画を見直す事になり、身を守る為に外注していた開発は総て白紙に戻し、攻めの経営は数年見送る、と云う内容を直接伝える為に来社されたのでした。
つまり準備していた仕事は一旦ナシね、と云う事です。しかも、2社とも同じ内容でした。がびがぼーん!
2件の訪問、時間にして合計3時間程度のあいだに、約2.5億円の仕事が吹っ飛びました。もう社長と僕は笑っていましたね。笑うしかない感じ。自分達の会社は3月決算だったので期内は流石に全然大丈夫でしたが、4月からの仕事がぽっかり空いちゃったワケです。さー困った困った。
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つづく
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