観客
会場の通路では、例の運営スタッフが待っていた。
「大変疲れているようですね。お疲れさまでした」
疲れ? ああ、言われてみると疲れているような気がする。体が重い。
「今大会は、お楽しみいただけたでしょうか? またのお越しをお待ちしております」
「楽しんでなんかいない。お楽しみをいただけませんでしたよ」
まるで悪夢のような出来事だった。折角負けたんだ。もう疲れた。眠い。
「それでは、さようなら」
「おやすみ」
Zzz
「あれ? ここは、自分の家か。なんだ、夢か……」
眠気に逆らえない。あと3分だけなんてケチなことは言わない。今日は休日だし、12時くらいまで寝てしまおう。おやすみ
「人間の触覚さんですか?」
「人違いですね。それではまた」
「観客席はあちらですよ」
また、ここに来てしまうような気がした。夢はまだ終わらない。
観客席に向かって歩いていく。一歩一歩、感じるものすべてが現実。夢なのに、現実みたいだ。まるで、魔法のよう。
観客席の間を通り、空いている席を見つけて座った。
起きたら何時になってるんだろう。きっと12時なんだろうなぁ。魔法が解けるのは12時と、昔から決まっている。
準決勝第1試合が始まった。もうこの夢は悪夢じゃない。
観客席はここですよ。
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