第88話オークラ

なにをしていたのか?記憶が飛ぶ。

痛みが支配しなにも考えられなかった。



否、マスターの顔が浮かび笑っている

約束がある帰らなければ。

目を開くが闇が広がっていた、手探りをすると直ぐに何かに触れた。


これがそれを邪魔するものだと直ぐに分かった。立ち上がろとするが足の感覚が無い。

痛みは太腿辺りからした。その先を手で触ろうとするがその先は無かった。


壁を掴み腰を浮かす。その壁は何かの肉の様に少し柔らかく弾力があった。


突然、体が投げ出される。どうやら今いる場所は動くようだ。

真っ暗で手探りで出口を探すが四方は行き止まりになっているようで進む道は無い。

足があればジャンプし天井を確認することが出来ただろうが…。


行き詰まってしまった。ならば己で道を作るしかない、壁を渾身の力を込めて殴る。

弾力で跳ね返されるが、効果はあった。

先程まで揺れていたが、揺れが止まる。


拳では効果は低いならば、爪と牙で!


壁にかじりつく、何やら液体が流れる血生臭い匂いが立ち込める。壁を咀嚼すると旨かった。

そういえば、腹もすいていた。

大事な事を忘れていても腹は減る。

痛みもあったが、食欲の方が強かった。

種族が関係あるかもしれない。


突然意識が遠のいた、危なかった死にかけた

眠気もきたが食欲には敵わない。

また揺れた、大きな揺れ。しかし、気にせず食べた。


隣にマスターとオークキが居ればもっと良かった。ゴブ先輩達にもお土産をもって帰らないと。牙でえぐった壁を更にえぐる。

力を使うが先へ先へとマスターがこの先に待っている様な気がした。力がこもる先へ先へ



突然先が開けた、が、闇が続く。

どうやら目をやられているらしい。

そういえば、少し痛みもあった。

足の強い痛みで掻き消されていた。

何も見えない光を失ったのだ。


血を失いすぎた、意識がまた遠退く。

誰かが近くによる気配がした。


誰かが優しく撫でた。

ああ、きっとマスターだ。

長い間離れていたからマスターが迎えに来たのだ。

長い旅路のはてに、最後に会えた。

これで思い残すこと無く死ねる…。




そしてオークラは動かなくなった。


(ブモブモ言ってました)

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