第89話オーク傭兵団その後

オークの旦那が黒竜に喰われた!!

そんな馬鹿な!!


黒竜は勝ち誇り飛び立とうとした。

が、空中で突然苦しみもがき墜落した。


暫く、地面でもがくと動かなくなった…。

どうなってる?

皆が様子を伺う。すると黒竜の腹が裂け

そこからオークの旦那が転がりでた。


流石はオークの旦那だと駆け寄る、しかし

足は無く、黒竜の血に混じり大量の出血をしている。


旦那の手が何かを探すように空中をさ迷っていた。俺はその手を掴む、オークの旦那の手は大きく傷だらけでゴツゴツした手であったが、今は力無く握り返してきた。


旦那!旦那!


呼ぶが返事は返ってこない。

力弱く握っていた手もだらりと地面に落ちた。


オークの旦那!!







オーク傭兵団は解散した。

それぞれに身の振り方を考えている所だ。


学者は諜報補給部隊を主体とした者達で

オーク商会を立ち上げるようだ。資金は

黒竜討伐の報償金と黒竜の素材で一財産あるため問題はないだろう。

俺も誘われたが、オークの旦那を失った喪失感で今はそんな気力にはならなかった。



オークの旦那は黒竜の山の一番高いところに墓を建てた。その隣には黒竜戦で亡くなった傭兵団員の墓も…。



皆と別れ、南へと歩いた。今までオークの旦那達と歩いた道を。

マルベスト公国にも立ち寄った。

公王はこんな俺の事も覚えてくれていたのか

駆け寄ってきてくれた。大臣にこっぴどく叱られているのは今も変わっていないようだが


オークの旦那の死を知らせた。共に泣いた



騎士として支えてくれないかと頼まれた。

大出世であるが、断った。

いつでも来て欲しいと、公国の紋章入りのコインを頂いた。俺なりに丁寧にお礼を言い

公国を後にした。



行く宛もない旅路の途中、ラリーに会った。

どうやら待っていたようだ。

よく分かったなと言うと、オーク商会の情報網で俺を監視していたらしい。

どうやら俺がこのまま消えて無くなりそうな顔をしていたらしい。そんな事はしないさ。


「元頭、どうするですか?」


ラリーは変わらぬ呼び方で俺を呼ぶ。


「さて、どうするか。何も考えていない」


「でしょうね。」


ラリーを小突く。


「良い人は居ないんですか?」


そういえば、少し迷った時もあった。

6年も前になる。最終的にはオークの旦那と傭兵団をとったのだ。

俺には勿体無い器量の良い娘だった。

きっと今は他の男と結婚して幸せな家庭を築いているだろうさ。



「元頭、それってポルロク村の娘ですか?」


「なんでお前が知っている!?」


「オーク商会の情報網を舐めないで下さい」


学者率いるオーク商会に少し恐怖を覚えた。


「そういえば、その娘。今では子供が居るそうですよ」


ほら、やっぱり幸せに暮らしているのだ。

昔の男がわざわざ出向いて、壊すような事はしたくない。


「何でも、旦那が酷い奴で数年も家を空けて帰ってこないとか。家に金も入れないから

その娘は毎日仕事と育児で大変らしいです。しかもその旦那は酒好きで、風呂もわりかし入りたがらないタイプらしいですよ」


むむむ、後半は何か通じる物を感じる。

行くべきか?いや…。


「遠くからでも見てみませんか?

6才になる子供も居ますし」


とラリーはニヤニヤとにやけていた。


!!

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