第52話大商人アルバイ

ハニーミルクあいすの完成により

私の商会は一気に躍進した。

はんばーぐかれーと共に飲食業界に革命を起こしたのだ。


魔道具店についても、多額の資金援助をした所、冷蔵魔道具の他にもナズール技師の画期的な数々な発明が当たり莫大な資金が動く一大事業となりアルバイ商会の重要な資金源となった。


そんなある日、緊急の一文が商会へと届いた


「ゴブリン村壊滅、連絡手段不能、蜂蜜在庫無し。」


この手紙を受け取った私は、大慌てで旅支度を整え王都を後にした。



途中大きなオークに出くわしたが、敵意はなく森を北へと進んでいくのを見送った。

馬を乗り継ぎ、最果ての村へとたどり着いた

村にいた雇った護衛を連れ、ゴブリン達の村がある所へと向かったが建っていた家は潰れ

ゴブっ子一匹いなかった。蜂達のコロニーも

壊れ、こちらも蜂っ子一匹いない。

途方にくれた私だったが、思い立ち洞窟があった所へと向かう。

岩で塞がれたあの洞窟は綺麗に岩が取り除かれ、黄色い布を巻いた見慣れたゴブリン達が何やら作業をしていた。


「おーい!」


私が手を振り声を掛けると、ゴブリン達も手を上げ答えてくれた。

不信なオーガの出現、ゴブリン村の壊滅。

心配していた事は杞憂に終わっていたのだ。


ゴブリン達に、洞窟へと通される。

護衛達は警戒し、私を止めようとしたが

私一人で行くから外で待っていてもいいと言うと、渋々と共にゴブリン達の後へと続いた


以前よりも大きく開いた通路を通り、奥には以前には無かった地下へと続く階段が備えられていた。


階段を降りると其所には草原が広がっている

護衛の冒険者達も驚いているようだ。

時々、緑豊かなダンジョンの部屋を探索する事はあったが今回のように、本当に洞窟の中にいるのか、いつの間にか外へと出ているのではないか?と見間違うような、大草原が広がっていた。


暫く歩くと、ゴブリン達の村が見える。

以前の家よりも立派な家が建ち並ぶ、子供のゴブリンが走り周り荷物を担いだゴブリンが

こちらに頭を下げ自分達の作業に戻っていく

先程まで警戒していた護衛達も呆然とそれを見送っていた。


ゴブ太殿も健在で、無事だった事を喜び忙しい所にお邪魔してしまった事を詫びた。

心配していた蜂蜜についても、立派なコロニーが建てられ絶賛生産中であるらしく数日後には果ての村へと輸送が開始される。

ダンジョンマスター殿も今はダンジョンの調整に忙しくされているので、またもや直接会うことは叶わなかったが新設された第三階層の入出許可を頂いたので明日ゴブ太殿と視察する予定である。



ゴブリン達が台車と呼ばれる四つ輪を押す

その台車には樽が積まれ、その樽には何やら鉱石が大量に詰め込まれてい。


「…この鉱石は?」


私は樽に詰め込まれた鉱石を一つ手に取った


「金ゴブ」


「ですよね…」


拳大位の石にはキラキラと黄金色に輝く

細かな粒が含まれている。


しかも私が知っている物よりも金の含有量が大幅に多い!?こっちの樽にはまさか銀!?

こっちは宝石!!



かくもダンジョンとはこれ程恐ろしいものだったのか。各地に点在し莫大な資金を投入しても僅かしか歳出されず放棄された採掘場がいくつあっただろうか。

しかし、ここは確実にそして高品質の鉱石が山のように採掘できる…。

もし私が国の中枢にいたら目の色を変え軍の派遣を訴え国の為に独占しようとしだろうが

幸いにも一商人であり、何より彼らに命を助けられそれだけではなく、飲食店の成功や今では蜂蜜を優先的に卸して貰っているのだ

恩はどんどんと溜まり返せる当てがない

秘密を守り絶対に仇で返すのだけは避けねばならないのだ。


鉱石の一部を扱う事についても了承を得た

どうやらダンジョンマスターは最初からそう考えて、ゴブ太殿に価格設定などを伝えてくれていたようだ。量から言えば其ほどではないが破格の値段での取引に感激している。

目算であるが今回の鉱石類での売上(宝石もあり)で私の目標のスタートラインに立てるであろう。


第三階層には他にも、火山と呼ばれる危険なガスやマグマの熱で暑く危険な場所がありこちらにも案内された。

最初は危険であると言う事で万が一に備えお断りしようと思っていたが何やら蜂蜜酒が旨いと言う言葉に背中を押され一度行ってみることにしたのだ。



暑い所での冷えた蜂蜜酒の一杯と想像が膨らむ私はゴブ太さんが服を(と言っても腰簑しか履いてないが)脱ぎ出した事に驚いたが

どうやらここは脱衣場と呼ばれる場所で

裸になってこの奥に通された。

女性の冒険者もいたが彼女は雌のゴブリンに反対側の建物へと案内されている。


裸に一枚の布スタイルの私達はゴブ太さんの後へと続く。そこは湯気が立ち込め、大きな大きなお湯の貯まった池があった。


「これは!?まさかお風呂?」


ゴブ太さんは早くも掛け湯で汗と泥を落とし

お湯に浸かり手招きしていた。

私も冒険者もゴブ太さんを見習い掛け湯をし、お湯に浸かる。



天にも昇る気持ちで湯に浸かっていると

ゴブ太さんに肩を叩かれ現実に戻された。

そうだった本命はこの後だ。裸のまま布一枚を腰に巻き、用意されていた蜂蜜酒をあおる


クーッこの一杯ために生きている。






最高の一杯を堪能した私は新設されたゴブリン村をダンジョンを後にし、鉱石大盛の樽を携えて一路王都へと向かっている。

これからは私の戦いだ。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る