まつとしきかば
金木星花
序歌
プロローグ
「立ち別れ いなばの山の 峰に生ふるまつとし聞かば いま帰り来む」
これは、中納言行平が詠んだ歌だ。百人一首の一つでもある。
古典の知識なんて、全くと言っていいほど知らなかった僕に、彼女は色んなことを教えてくれた。
だけど……。
今、彼女はどこで何をしているのだろうか。
僕と一本の大きな松の木は、今日も彼女の帰りを待っている。
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