ガリ勉異世界譚

@psy

プロローグⅠ


こんなことはいつまで続くのだろうか?


学校に行って友達と話すこともなく、授業を受けて帰る。そして、帰ってまた勉強をするだけの毎日


僕、國枝くにえだ 勉つとむはガリ勉なだけのどこにでもいる中学二年生である。


その日も僕はいつものように学校からの帰りの電車に乗っていた。耳をすますと周りの声が聞こえてくる。


「で、その時その子が〜〜…」

「えぇ〜〜マジで?そんなことあるの?(笑)」


何度も聞いたことのあるような女子高生達の会話が聞こえて来る。参考書を読みながら僕はそんなことを思った。


ここで、僕がガリ勉になった理由を簡単に説明しておこう。


僕は母子家庭だ。そのせいか、母親は責任を感じ、昔から僕に勉強ばかりさせてきた。


勉強は嫌いではない。勉強をしている間は問題のことだけを考えていればいいからである。


嫌なのは、母親に無理矢理やらされているときである。


将来のためだと言っているが、どうなるか分からない将来のためにはやる気が出ない。


それに、1番嫌なのは価値観を押し付けられている感じがすることである。そういう時はとりあえず勉強に集中して忘れるようにしている。


これが僕がガリ勉になった大まかな理由である。


「はぁ〜勉強なんかない世界に逃げ出したいなぁ〜」


そんなことを電車の中で参考書を読みながら呟くと、急激な眠気に襲われた。いつもはこんなことはないのだがこの日は別だった。


最寄り駅まではまだまだあるので、仕方ないので眠ることにした。


目がさめると周りには誰もいなくなっていた。いつもの女子高生も、会社帰りのサラリーマンの姿もなかった。


「あぁークソ!寝過ごしてしまった。て言うか、ここどこだろう?」


そう言って車窓を覗いてみるとそこには漆黒の闇が広がっていた。車内からの光が一切届いていないかのように電車の周りには闇しかみえなかった。


「街灯の光すらない田舎まで来てしまったのかな?とりあえず、車掌さんに今どこか聞きにいこう」



席を立ったその時僕はある違和感に気付いてしまった。電車の揺れを感じなかったのである。


「こんな何もないところで終点ということもないだろう。きっと列車行き違い待ちかなにかかな?」


そう思い、電車の先頭のほうに歩いていった。


先頭車両に着いた時そこには頭の上に輪っかを浮かべ、翼を生やした金髪の女性が浮いていた。これは天使と呼んでさしつかえないだろう。


呆気に取られている僕に天使はこう言い放った。


「この世界からの脱却を望む、不断に知性を磨きし者よ。その願い叶えてさしあげましょう。」


「えっ?なに??どういうこと???」


「因みに拒否権はないので、早速実行させて頂きます。」


天使がいい終わると同時に今まで止まっていた電車が動き始めた。電車はどんどんと光の中に消えていき、僕も光の中に入って行く時に最後に天使はこう言った。


「次の世界での貴方の新しい人生が幸福で溢れたものであらんことを……」


そうして、僕は意識を失ってしまった。

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