DOLLS WAR

桐谷海斗

第1話

この話はもちろんフィクションです。実際の団体等とは関係ありません。もし会社名など現実に存在していたとしても無関係です。


 この世界は混沌と破壊と争いに埋もれていた。進化してきた技術はついに人であって人と言い難い兵士を、サイボークを生み出した。戦場の主役は戦闘AIを積んだアンドロイドか人体改造されたサイボークとなった。戦場では完全型と部分型と言われることもある。これはそんな場所での物語だ。



「こちらS-A3。目標3体確認。完全型2、部分型1と推定」

「了解。有効射程内に侵入し次第部分型から撃破せよ」

「了解。…ふー、やれやれだねぇ」

そうつぶやく兵士のもつ狙撃銃はSCM社製SCM-M30-2型、7.61mm弾30口径。一目で部分型とわかる兵士の急所付近を貫くことは容易い。それでも十分に、確実に撃破できる距離に入るまで待つ。

そして敵との距離がおよそ700~800mとなった瞬間。銃弾を発射させる。その直後のはその場から離れる。すぐに身を隠すと先ほどの場所に近い場所に銃弾が撃ち込まれ火花が散る。

「との時間でのカウンターでこの精度とは、また恐ろしいねぇ」

あの場にいたら蜂の巣、というほどではないがかなりのスリルを味わえていただろう射撃精度だ。兵士は通信機に向かって現状を報告し始める。

「射撃成功。敵迎撃精度目測射撃ポイントを中心とし半径50に80~90%着弾」

「早い。そして正確だ」

「地形データから狙撃に適したポイントを割り出したか、着弾の仕方などからの推測でしょう」

「現在敵攻撃は?」

「今は音沙汰なし」

「そうか...よし、持ち場を離れろ。調査機にしてはいいアンドロイドだ。迎撃ポイントでの狙撃準備に移行」

「了解」

兵士はスコープを覗き敵の挙動を確認。移動しようとしたところで敵の兵に気を留める。

「ん?ありゃあ」

やや観測精度を高める。

「ほっほー。2DMか?形的に600か700...か?いや」

敵兵士が別方向を向いたことで分かりやすくなる。

「2DMのDX系か。40か50式なら前世代の高級機じゃないの。通りであの精度か」

持ち場から離れつつつぶやく。

「しっかし一世代前とはいえ調査機に高級機とは...嫌なもんだねぇ」



「ただいま戻りましたー。そして次の持ち場に入りまーす」

「おいおい、こういう時はもう少しまじめに話せ。コウガ」

兵士の上官があきれ顔でS-A3と呼称された兵士、コウガに話しかける。

「了解。まったく堅苦しいですね、ネイブさん。肩の力抜いていきましょう」

少々からかうようにコウガが返す。

「ああそうかい。さっさと持ち場に就け」

「了解」

と立ち去り際、コウガが話しかける。

「あぁそうだネイブさん」

「なんだ」

「敵の調査機、ひょっとすると2DM-DXモデルかもでしたよ」

「...本当にDXタイプか?」

「確実性を持たせるほど詳しくは見ていませんが、おそらく」

「まさか...40や50じゃないだろうな」

「確実性を持たせるほど詳しくはと申し上げたはずですが」

「お前に聞いてるんじゃない。...お前はどう思う?」

「可能性はゼロじゃないでしょう。2DMなのはほぼ確実です。その中にDXモデル40式50式というのはあるんですから。それにあの迎撃精度です。世代内最高クラスと謳われた2DM-DXの40式50式なら納得もいきます」

「となると、どうも40、50式とはいかなくともDXモデルなのはそうらしいな」

「えぇ」

「分かった。情報としては頭に入れておこう」

「ありがとうございます。...どうかしました?」

その場を去ろうとしてもまだこちらを見ている上官にコウガが振り返り聞く。

「いや、今時自機構に組み込むことが多くてそんなでかい銃持ち歩いてるやつ自体珍しいのに、その中でもSCM-M30-2型、しかもロゴ入りのを持ち歩くとかよっぽどの変人だと思ってな」

「ロゴといっても光を反射するわけじゃないですし、目立ちづらく細部のカッコつけとして入ってるだけですよ。それに、ノーガラスの合成素材性広倍率調整域のスコープでステルス性と敵の発見から精密照準までこれ一つという機能性を実現、7.61mm弾では相当の致命性、おまけに長い有効射程。有能な銃ですよ」

「その代わりに特殊スクリュー性の弾回転、強烈なパワーと言えば聞こえはいいがじゃじゃ馬過ぎて速射の難易度が高すぎるばかりか押さえつけようとしてガク引き頻発、そうでなければぶれまくって結局ろくなことにならない。おまけに普通の7.61mmと思いきや銃創の特別性からもわかる通り特殊弾。プラスをすべて消し去ってまだ足りない駄作と言われた銃だぞ」

ややあきれ顔でネイブが言う。

「そんなことを言ってるやつらはこいつの扱いを分かってないんですよ。それに、今の機械化技術機構ならこいつを押さえつける力は十分に手に入ります。本当にうまいやつはそこまでしなくても上手くいなして見せますよ」

得意げにコウガが返す。

「分かった分かった。これ以上は水掛け論だ。持ち場に移れ」

「了解」

こうして今度こそそれぞれが移動を開始した。

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