第4話 世界は意外と甘いのかもしれない

始まりがおかしいとはいえ、関係性だけは変わったボクたちの放課後。

『恋心』があるのか、と聞かれたら、ある。少なくともボクには。だから、気になっていつもの話をした後、聞いたのだ。ちゃんと。

今になって聞くの?と笑われたけれど答えにホッとした。


だからと言って、なにもない。

もうあれから、ひと月は経っているのだけれど。


今日もまた哲学のような『生きる意味』についての話をしていた。

もう少し、頭に花の咲いたような会話でもしたほうがいいのだろうかと思ったけれど、出来ないものは無理にしなくてもいいだろうし、したくないわけでもない。きっと新しい会話になるだろう。ボクからはできないけれど。

そんなことを考えながら、ふと、思ったことを聞いてみた。


「黒川、ってさ」

「なにー?」

「休みの日、何してる?」

「え?えっと……特に決まって何かっていうのはないけれど……」

と言いながら出てきたのは、映画と読書と買い物とという答えだった。

ならば、と思いなけなしの、ほぼ、ない、ボクの勇気を出して言ってみた。

「じ、じゃあさ、映画、行かない?」

「え?」


ものすごく驚いた顔をされた。映画に詳しくもないボクがなんでそんな誘いをしてしまったのか、と後悔して、

「もし、観たいのがあれば、だけど。なかったら、そうだな……」

と、続けてみるとまだ驚いた顔をしていた。


「……すごく驚いてるけれど、嫌なら言って」

「あ、あのね、あの。私も言おうと思ってたの。だから驚いたの」

「え、そうだったの?」

「うん!あのね、この映画、一緒に観たいなって思って……」

そう言うと、鞄から雑誌が出てきた。

「あらすじを見ていたら、なんとなく田辺くん好きかなって」

「……うん、好きそう。観てみたい」

「よかったー」


そんなこんなで、なけなしの勇気がなくなったけれど嬉しい予定が出来た。

ちなみに、内容はラブロマンスではない。

頭に花の咲いたような話を出来ないと言いながら。自分からした気がする。


「じゃぁ、次の土曜に」

「うん!」


これは、俗に言うデートなんだろうなーと、勇気と共に気力も使い果たしたボクはボーっと思っていた。

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