第2話 ボクとキミの距離。

今日の放課後も、ボクはクラスメイトの黒川麻未と話をしていた。

話の内容は日々変わらず『生と死の尊さの違い』のようなもの。

なぜ黒川に話すのかと聞かれたら、彼女しか聞いてくれないからだ。

他の奴らは当たり前のような顔をしてボクを変人扱いした。

ボクからしたら他の奴らのほうがどうかしていると思う。

そして、今日、ふと疑問が浮かんだ。


「キミはどうして、ボクの話を聞いてくれるの?楽しいの?」

きょとんとした顔をして、黒川は僕を見て言った。

「田辺くんの話、私には思いつかないことだもの。面白いし、楽しいよ。それなら、どうして田辺君くんは私に話してくれるの?」

答えに困って目を宙に漂わせた。

「他に、ちゃんと聞いてくれるやついないから・・・・・・かな」

「そっかー。いないんだ、残念。でも、嬉しいかな」

そういうと、黒川は何が面白いのか、くすくすと笑いだした。

「なんだよ、笑うことないだろ」

「だってなんだか可愛くて」

「はぁ?可愛いってなんだよ」

「ふふ、ごめんね。普段と違う話をする田辺くんが意外だったの」

「そうか?」

「そうだよー」


思えば長い時間一緒にいたように感じていたけれど、ボクは彼女の事を何も知らない。

そして、彼女はボクの事を知らない。

それで成り立つ奇妙な関係だった。

それでいいと思っていた。


それからしばらくして、黒川がボクに言った。

「田辺くんは、これからどうしたいの?」

「それはもちろん、もっともっと学んでボクの考えに答えを出したい」

「答えを出したら、どうするの?」

「それを実行してみる」

そういうと少し考えてから、

「じゃぁ、その先は?」

「その先?」

「答えが出て実行したその先の話だよ」

「あぁそれは、答え次第じゃないかな」

「どうして?」

「だって死ぬかもしれないし」

「その時、私はどうするの?」

まじめな顔で聞かれ始めて気がついた。

彼女はずっと一緒にいてくれるつもりなのだ、と。

でも、勘違いかもしれない。なんて、頭の中でぐるぐると考えていたら、

「私は、田辺くんと一緒にいたいから答え出ても。置いていかないでね」

と、悲しげな笑顔で言われた。

「もちろん、だ」

「よかったー」


ボクが思っているより、黒川は変な奴かもしれない。

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