時の旅
renovo
打ち上げ花火
「今日打ち上げ花火見てきたのよ。映画のね」
清楚系な僕の彼女ゆいかはそう言った。彼女の長い髪は店内のオレンジ色の照明に照らされながら茶色く輝いていた。
「はやなし君は見た?」
「うん。見たよ。すごいよかった」
喫茶店の中で僕らは話をしていた。
ゆいかは映画館で打ち上げ花火を見た後こうやって僕に話しているのだ。
「なんとなく芸術的だったわね」
わかったようにゆいかは言っている。
「僕も将来映画監督になりたくなったなー」
「駄目よ。はやなし君はちゃんと働かなきゃ」
「大学を卒業したらどこか会社に働きに行くのかなー」
「はやなし君はそうするのが一番いいと思うわ」
喫茶店の中でコーヒーを飲み干す。
がらがらというストローでコーヒーをすする音が店内に響いた。
「僕はあまり映画を見ないんだよ」
僕らは喫茶店でそんな風に話をしていた。
気が付くと夜になっていた。辺りはやけに静かだ。店内に人は少ない。BGMが聞こえるだけだ。
隣の隣の席の人は女のひとだけれど、さっきからスマートフォンをずっといじってヘッドホンをしていた。
「うまくいくといいわね。いろいろなことが。あの映画みたいに」
ゆいかは僕にそう言ってぼんやりと通りを眺めた。
ふいに時間は巻き戻る。
あたりの景色は急に変わってしまう。
目の前にはゆいかが少し時間が立つ前のゆいかがいた。
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