風に舞う

こと

第1話美しい人


独学で趣味の延長でしかなかった

それでも絵の上手い父が僕の自慢だった



そんな父でも何故か頼まれない限り

カメラでいいだろと言って

頑なに肖像画だけは描かなかった



ある日友人に頼まれて病院で絵画教室のボランティアを頼まれた父はその日以来

子供たちからの似顔絵や手紙を持ち帰って来るようになった



「親父、先生とか呼ばれてたりすんのか?」


「まあな。」


「俺も子供の頃は親父の顔描いてたなぁ。描いてやればいいじゃん、子供たち」



「そう長くは続かんだろ」




そんな日が暫く続いたある日

子供たちからのプレゼントの中にクシャクシャに丸められた紙が混じっていた


これも子供が描いたのか?そう思いながら

紙を開いて見ると


「ん、?親父が描いたのか?これ、どう見ても女性、だよな 。さては描いてみる気にでもなったか?それにしては明らかに俺よりも年上な気が、子供相手のボランティアだよな?誰なんだ?」


気になったがそれ以上は考えない事にした。




それから更に日々が過ぎ

部屋の片隅でケースに収められた子供たちからのプレゼントを部屋に飾ってやろうと整理していると細長く筒状に丸められ中心を輪ゴムで止めた紙が目に止まった


それを開いて見た瞬間、何故かあのクシャクシャに丸められた紙に描かれていたの女性と一致した。それだけではない、

単に描かれている彼女の特徴を捉えているだけではない彼女にしかないそれはもう言ってしまえば描かれた彼女を目の前にして描いたであろう父の肉眼で彼女を見ている錯覚になる程に


美しい人

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