第14話 「女の子らしくない趣味②」


「なぜ、俺に?」

「遠野たちの声が図書館に響くから、いつも会話が聞こえてきちゃう。私も悩みを相談したら、遠野なら答えてくれそうだと思ったんだ」

 どこかボーイッシュに笑う美知子は、小学六年生なのに発育が悪く、控えめに言っても女の子らしくなかった。服装も中性的で、髪を短くすれば少年と見えなくもない外見をしている。

「俺でよければ、趣味が合う作品のはなし、聞いてやるよ」

「本当か!?」

「だが、趣味が合う作品だけだ……。図書館にある本くらいなら、無料で読めるからな」

「じゃあ、家からおすすめの作品を持ってきてやるよ!」

 そこで、清川 秋子が図書館にやってきた。


「二人でなにをはなしてるの? 私も混ぜてよ」

「「……」」

「ちょっと! 楽しそうに話してたじゃん!」

「帰る」

「俺も」


 図書館の日常は少しだけ変化していた。

 いつもはひとりで図書館から帰る来世は、この日だけは、秋子と美知子の三人で一緒に帰った。そうはいっても、秋子は来世の後を付いてくるだけ。美知子は遠野以外とは、趣味のはなしをするつもりがないから、帰り道がかさなる場所まで、ほぼ秋子ひとりでしゃべっていた。

 しかし、なんだかんだで美知子は、秋子のはなしに相槌を打っている。それを気に掛ける程度に、歩調だけは合わせている来世。

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