第五章 合わない趣味

第13話 「女の子らしくない趣味①」

「遠野、人と違う趣味があるのって、やっぱり変なのか?」

「…………なんのことだ?」

 山田やまだ 美知子みちこは、メガネを掛けた地味な少女。

 ある日のこと、そんな美知子は来世に声を掛けていた。


「前に、岩乃森小次郎の小説、読んでたじゃん? 私はあの人の作品が好きで、特に初代ヒーローが好きなんだ」

「岩乃森作品か、いいよなぁ。初代とはまた渋いところを選ぶな」

「ああ! もちろんヒーロー物語なんだけど、平成作品にはない闇を感じさせる設定。なにより、見終わった後に感じるなんとも言えない後味! はあぁ……思い出しただけで、胸が熱くなる!」

「そ、そうか。でも、山田みたいな女子が、意外な趣味だな。男子でもそんな昔のは見ないのに」

「そうなんだ……。パパの影響か、昔のヒーローだったり、最近のでも少年マンガばかり好きになってる。でもそのせいで、友達が好きなマンガとかアニメの良さが、分からないんだ」

 美知子は友達と会話していても、普段は相槌あいづちを打つだけで、自分から話題を提供して盛り上がるタイプではなかった。

「私もあわせようとはしている。けど、自分の好きな作品のはなしをすると友達が固まっちゃって、話したいのに話せないから、つまらないんだ」

 そういう美知子は、とても悲しそうな顔をしていた。

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