第11話 「学校に行きたくない②」


「あの、遠野君! な、なにも言わないの?」

「……なんのこと? 別に、言いたいことはないけど」

「あのね、前から遠野君とお話ししたいと思ってて、それでね、あのね……」

 千鶴は何が言いたいのか定まらず、来世を前にして焦ることしかできなかった。

 その様子を見かねたのか、ただ待つように千鶴の方を見ながら、一言だけ声をかける。

「いいからまず、ここに座って落ち着いて」

 席に付くと、すこしだけ千鶴は落ち着いていた。


「遠野君は、その、私みたいにまわりから……いじめられたりしてて、でも平気そうで。だから……あの、その……」

 来世の隣りに座っているため、視線を感じないのが救いだった。少しづつ口が動き始めると、千鶴はやっと本題を切り出した。


「学校に行くのがつらくなったり……そういうのなかった?」

「……なんだ、そんなことか」

「え?」

 来世は何気なく言うものだから、千鶴はその言葉に耳を疑った。

「悩んだりしなかったの?」

 勢いにまかせて、思わず来世の腕を掴んでいた。

「あ、ごめん!」


 千鶴はすぐ手を離したが、歳の近い男子に触れることが初めてだったので、少しだけ顔が赤くなってしまった。

 ちらりと来世の方をうかがうも、特に気にした気配がなく、自分ひとりだけ熱くなっているのが恥ずかしく思えて、沈黙してしまう。

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