色々な意味で不幸な三角関係

二重世界

第1話

「好きです、付き合ってください!」


今朝、下駄簿に入っていた手紙で呼び出されて校舎裏に来てみるといきなり告白された。

友達に手紙がバレた時は「これ、ラブレターかよ。羨ましいな、ヒューヒュー!」とか囃し立てられたりしたが俺は信じていなかった。手紙で呼び出しなんて今どき古すぎるし、どうせその友達のイタズラだろうと思っていたのだ。もしくは罰ゲーム。


だからといって無視するのも何かノリが悪いから来てみたら、本当に告白されるとは思っていなかった。

本来なら人生初の告白なのだし、浮かれても良いと思うのだがそうはいかない。その告白のあまりの気持ち悪さに軽く目眩がしてきた。


言葉は普通のものだし、別に相手が不細工だから嫌だというわけでもない。むしろ容姿は非常に整っているぐらいだ。

それでも一つだけ駄目な部分がある。その一つが他の全てを台無しにするほど致命的だ。


「何か言ってくれ、宮内!」


「……じゃあ……ちょっと気分が悪いから保健室に行ってくる如月翔」


今、俺が言った名前からも分かる通りこいつは男だ。男みたいな名前をしている女ではなく間違いなく正真正銘の男だ。


如月翔は背が高くイケメンでサッカー部のエース、勉強に関してはトップではないにしてもそれなりに出来るというモテ要素の塊で、しかも実際にモテており女子から何回も告白されている。

しかしこの男は全ての告白を断っており、誰かと付き合っているという話を聞いたことがない。


だから女子の間では色々な噂が飛び交っている。例えば如月翔には付き合っていないだけですでに心に決めた人がいるだとか、ホモだとか。

でも、まさかその噂が両方真実だとは思わなかった。しかも相手が俺とか。

こんなの女子達にバレたら嫉妬の嵐で殺されそうだ。それとも腐女子なら歓迎してくれるだろうか? 俺は絶対に歓迎しないけど。

これならまだ如月は熟女趣味とかロリコンみたいな特殊性癖の方が俺的には助かった。


「確かに顔色が優れないようだな。悪かったな、そうとも知らず呼び出して」


「あ、ああ……いや、気にするな」


爽やかな笑顔を浮かべながら自然に肩を貸そうとしてくる如月に対して俺は顔をひきつらせながら距離を取る。

普段なら良い奴だな、と思うだけだが告白された後だと必要以上に警戒してしまう。


「遠慮するな。ちゃんと保健室まで連れていってやるから」


「別に遠慮とかしてないから」


「ちょっと待ちなさい!」


いきなり第三者の声がこの場に鳴り響く。

くっ、この状況を誰かに見られたのだとしたらかなりマズイ!

俺の今後の平和な学園生活が崩れてしまう上に好きな女の子に引かれてしまう可能性もある。

何としてでも口止めをしないと!


「待ってくれ、これは違――」


言い訳をしようと振り返ったところで俺の言葉は止まる。

あまりの予想外の出来事にパニックになってしまった。

そこにいたのは姫野奏。俺の隣の席にして好きな人そのものだ。


「如月くん、これはどういうことなの!?」


「どういうことって聞かれてもな。見た通りだ、姫野。俺が宮内に愛の告白をしていたんだ」


余計なことを言うなよ、イケメンホモ野郎!!! 誤解を解くのが難しくなるだろ!


と、ツッコもうと思ったが混乱しているせいか上手く言葉を口に出来ない。

ていうか何か知り合いっぽいけど、どういうこと?


「私が前に断れたのは宮内くんが好きだったからってことなの!?」


え、マジで!? 姫野って如月が好きだったの!?

知らなかったんだけど!


「そうだ」


と、如月が肯定すると姫野が泣きながら俺をキッと睨んでどこかに走り去っていく。

こうして俺の隣の席の女の子に恋するという男子高校生らしい平和な生活は色々と悪い意味で終わりを告げた。

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