第10話

明くる日の早朝、それぞれが日常へと帰って行く。

みんな暇じゃない。そう、僕以外は。


アパートに戻る。

何の物音もしない部屋。


冷蔵庫のコンプレッサーが微かな音を立てる。

そうだ、冷蔵庫にビールが何本かあったはずだ。



朝だというのに、そのうちの1本を開け、一気に飲み干す。


ベッドに横になると、酔いが回る前に眠ってしまっていた。


目を覚ますと、すぐにテレビをつけた。

笑っていいとものテレホンショッキングが終わろうとしていた。


「来てくれるかな、いいとも!…か。」


そうだ、賀代に電話してみよう。


「あ、シン君?」


「うん、賀代ちゃん元気かな~と思ってね。」


「別に…普通やで。」


「そうそう!今週末に札幌に来るんだってね!連絡してくれれば良かったのに!」


「シン君と遊ぶわけやないし…」


一緒に温泉に行ったときの賀代ではないかのようだ。

翳りと湿度を帯びた会話に辛ささえ感じるほどだった。


「来るときは気をつけておいでね。」


「うん、わかった。じゃあな。」



何とも言えぬ重苦しい気持ちで週末を迎えるとは、予想もしていなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る