ピコット ~夏と秋のコード~

葉原あきよ

プロローグ

 六月二十九日。はるかの誕生日に、史郎しろうがプレゼントしてくれたのは、小さな丸いモチーフを一列に繋げた編み物のブレスレットだった。史郎が手づくりしてくれたものだ。夏向けに毛糸ではなくコットン糸で編まれている。レインボーカラーのグラデーション。

 両端が紐状になっているだけで留め具のないブレスレットは、一人では結べなかった。見兼ねた史郎が「やろうか?」と申し出て、綺麗な蝶々結びにしてくれた。

 こんな繊細な作品を作るのに、遥とは全然違う男の人の手だ。

 遥はそれを息を詰めて見守ったのだ。

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