LeditTious-レディティウス-

清水らくは

 それは、どこにでもある悲劇のはずだった。大人たちは町中を探し、そして町の外を探し、疲れ果てて、諦めて、両親を慰めた。夜は深く、冷たく、平凡なはずの事件を包み隠していった。

 人々は決して知ることはないが、事件は唯物論政府特別調査班の手に渡った。通称MCSRマクサール、僕らの仕事は、常に隠匿されている。

「レディット、これはびっくりですね」

 仕事に慣れてきた僕にとっても、驚愕せざるを得ない状態だった。だが、僕の上司は眉一つ動かずに言い放つ。

「ただの変死体だ。どうということはない」

 この人は常にこうだ。世界の全てに対して、悠然と構えている。

「だが、徹底的に解明はすべきだ」

 僕の腰元で、少女の声で宣言をする。声だけでない、背丈も、顔も、全てが少女。

 スーツに身を包んだ少女が、腕を失い、翼を生やした子供たちの死体を見下ろしている。全てが異様な光景。

 今回の仕事は長引きそうだ、そういう予感がした。


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