生きていたいと思った君は

しょしょしょ、

第1話

君はずっと、ずっとずっと前から

屋上にいるね。

空を見上げ何かを呟いているようだ。

それが何かなんて、君をずっと見ていれば

だいたいわかるよ。

''私はどうして生きているの''


だいたいわかる。

毎日屋上にいる君に、僕は惹かれた。

なんていうか、その、だっておかしいだろ?


集団好きな女子生徒が昼を屋上で過ごすなんて、

しかも1人。みんな君を恐れて屋上に行かないんだ。そんなこと、知らないだろうけど。


でも、僕は決めたよ。君と話をするって。


だから、明日、昼に行く。アレを持って。


ああ、アレとは僕オリジナルのエッセイ

彼女に伝えたいんだ。

本当はみんなに読んで欲しいけど、

みんなバカにしそうだからな。

怖いんだよ。


でも彼女は大丈夫。

人には言わないと思うし言う人がいないと思う。


では、書き始めよう。


《どうして生きるのか、迷った時、考えても無駄だ。なぜなら、考えて見つかるなら早くに死ねると思う。でも人は長く生きる。答えを見つけるために長く生きる。そして死ぬ時わかるのだと思う、これが生きる理由だったのかと。でも例外があると思う。それは、不意に訪れる何かをしている瞬間。

私は生きる意味がある。生きる価値があるのだと。

なかなか見つからないと思うけどね。

空って青くなったり白くなったり黒くなったり色々な色になるよね。僕が思うに、空はその時の自分の心を表している気がするんだ。だから、空が白い時は何か心の中に白いものが入り混じっている。

青い時はすっきりしているかもね。

君は空を見上げる、そうやって心を空に預けていたのだろう。でも気になる。


君の見上げる空は、いつも真っ青だ。


不思議だね、生きよう。》


こんな仕上がりになった。ははは、彼女なんて言うかな。明日が楽しみ。



そして昼になった。

僕が扉を開けると彼女がいた。

ただ空を見上げている。

僕が声をかけた。

「あの、ちょっといいかな。」


「なんですか。」


「読みたいものがあるから、聞いてて。」


彼女は何も言わなかった。だから読んだ。


あのエッセイを、淡々と読んだ。


すると彼女が空を見上げてにっこりと笑った。

「私、生きる意味など探してませんし、

思い悩んでもないですよ。

毎日屋上にいるのは、罰ゲームです。」


へ?うっそ〜。僕すごい恥ずかしいじゃん。


「ごめんなさい、今のは忘れてもらってもいい?」


「いや、友達に言っていいですか?最高だったので。」


「いや、ダメです。」


そして彼女は失礼しますと言って去っていった。


次の瞬間、校長先生が入ってきた。

「ちょ、君!そのエッセイ見せてごらん。ね!」

強引に取られ校長に渡った。

恥ずかしい未来が僕を待ってる。


「おおおおお!これは良い!ちょっと借りるね!」


そうやって去っていった。


教室に帰るとみんなニヤニヤしてて、

告白してきたの?とかめっちゃ聞かれたから

告白なんてするわけないだろ、

明日から学校来るかわかんね。と言い残した。


その後の授業は、胸騒ぎしかなかった。


次の日


朝から学校が騒がしかった。

みんな僕を見ているようで、

きっとあの女の子がやらかしたのだと悟った。


教室に入ると、みんな一斉に寄ってきて、


「お前!!!新聞に載ってるぞ!!!

エッセイが!これお前のだよな!!!!

すげえええなあ!!!!」


僕、エッセイ、新聞、騒ぎ、


ふぉええええええええええええ。


僕のが新聞に載った。やっば、なんで?

あ、校長?あの生徒?


そして僕は校長室に呼び出され、

記者の方と対談し校長と写真を撮り

なんか、デビューした。



そう言う意味では、あの女子生徒…

かなりやらかしたね。ありがとう。


てか、誰だったの?あの子。

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生きていたいと思った君は しょしょしょ、 @shoji-tsubasa

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