閑話 首座様の愉快な仲間たち5
5 娘婿その2 タランテラ国主代行
「……フレア」
つい数日前に知り得た妻の本名を呟き幸せをかみしめる。頬に口づけるが、起きる気配はない。故郷の村で静養も兼ねて過ごしていたのに、何日も旅してタランテラへ戻ってきた。そして休む間もなくラグラスやベルクの捕縛に立ち会い、それに伴う会合にも出席したのだ。しかも夜は赤子の世話もきちんとしている。本人は口に出して言わないが、やはり疲れているのだろう。
しかも初夜となる昨夜は周囲が気をきかせて2人きりにしてくれた。無理をさせるつもりは無かったのだが、彼女を妻とするあまりの嬉しさに歯止めがきかなかったのだ。
「フレア」
エドワルドはその頬にもう一度口づける。1年近い間、度重なる不幸と試練に見舞われた為に、この幸せが夢ではないかと思ってしまう事がある。疑り深い性格になってしまったと自分でも思う。それでも、愛しい家族の存在を感じていないと安心して眠れないのだ。
まだ起き出すには早い。彼女をゆっくり休ませる為にももう少しこうしていよう。その存在を確かめる様に、もう一度彼女を腕の中に抱きこんでエドワルドは目を閉じた。
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