巨大ロボは空からの贈り物

ちびまるフォイ

ストレスの結晶ロボ

窓を開けると巨大ロボが家のそばに立っていた。


少年が腕を上げるとロボットも連動して同じ腕を上げ、

おしりをかけばロボットも同じポーズをする。


「なんじゃこりゃああ!?」


意味の分からない状況にツッコミが出たのはしばらくたってからだった。


少年は道を破壊し、家を蹴散らしながら病院へ行った。

今見ている映像はすべて自分の妄想だというオチを期待していた。


「あとで病院の駐車場直してくださいね。

 あんたとロボが来たせいでベッコベコに凹んで車止められなくなりましたよ」


「夢じゃなかった……」


他人の目にもロボットは見えているので、

今まで踏みつぶした建造物には謝るしかできない。


「あの、僕が歩くとロボットがずっと後ろをついてくるんです。

 これいったい何なんですか?」


「ストレスですね」


「ええええ!?」


「あなたストレスを抱えているでしょう。

 鬱屈したストレスがたまりに溜まって……巨大ロボを作りました」


「最後だけめっちゃ飛躍してませんか?」


「医者の言うことはぜったいです」


「治療法はないんですか?」


「うちはロボ科じゃないんで」


「知ってるよ!!!」


少年はたしかにストレスを多く抱えていた。

学校ではいじめられていて、家でも居場所がなく、さらに受験まで控えていた。

悩みが絶えないストレスバイキングシーズンだった。


「とにかく帰ろう……」


少年は家路についた。

帰り道でもすぐ後ろを歩く巨大ロボによって

電線はぶちぶち切られ、コンクリートは足形にゆがんだ。



その後、巨大ロボはやっぱり偉い人の話題にあがった。


「少年が巨大ロボを操作しているようです」

「国防兵器として使えないのか」

「それよりも今は平和ですから存在自体が危険です」


共通の結論として巨大ロボが近隣住民にめちゃめちゃ迷惑かけているので

なんとかしようということになった。


少年のもとに役人が来たのは数日後。


「なるほど、この巨大ロボは君の抱えているストレスが貯まった結果なんだね」


「そうらしいです」


「逆にいえば、ストレスをなくせばロボは消えるかもしれない。

 君が抱えているストレスを教えてくれるかな?」


「抱えているストレス……学校でいじめられてました。学校側は認めないけど」


「なんとかしよう」


その日のうちにいじめの首謀者は転校させられた。

あまりの仕事の早さに少年もロボも驚きのポージングになった。


「政府の力ってすげぇ……! なんでもできるんだな」


この巨大ロボが本気で暴れれば被害は学校のいじめと比にならないほど大規模になる。

大きな脅威を避けるために政府が必死だということを少年は気付いてしまった。


「これはうまく利用できるかもしれない」


少年の顔が悪人づらへと変わった。



また役人がやってきてストレス原因を探った。


「あーーそうだなぁ。この貧乏生活にストレスを感じるなーー」


「なんとかしよう」


政府から巨大ロボ補助金が入った。

また役人が来てストレス原因を聞いてくる。


「そうだなぁ、全然モテないからストレス感じるなぁ」


「……なんとかしよう」


美人が少年のもとに多数手配された。

次に役人がやってきたとき、少年はまた要求した。


「最新のゲームが手に入らないからストレスかなぁ~~」





政府は会議を開いた。


「……遊ばれてないか?」


「いつまでたっても巨大ロボは消えないし、

 もしかしてロボをたてに好き勝手言ってるだけかと」


「かといって、本当だったらどうするんだ!」


「へそを曲げられて巨大ロボで暴れられても困るし……」


一国の政府が少年にへこへこする状態ではいられない。


「「「 よし、物理的にぶっ壊そう!! 」」」


結論が出てその日のうちに戦車やらが巨大ロボを取り囲んだ。

巨大ロボになれている近隣住民はもう戦車ごときじゃ驚かなかった。


「かまえーー。うてーー!!!」


耳元でロケット花火を爆発させたような爆音が閑静な住宅街に響いた。

戦車から放たれた最新鋭の大砲は巨大ロボに命中し、傷ひとつつけられなかった。


「うそ……」


これには戦車に乗っていた軍の人も驚いた。

さらに悪いことに、この行動が完全に少年の怒りを買ってしまう。



「なにしてんだ! 僕に逆らうなんて許さないぞ!!」


売れた子役のようにワガママになった少年は、

巨大ロボを自由自在にあやつって戦車をなぎたおし町を破壊して回った。


その後開かれた会議では重い沈黙が広がった。


「……あんなにロボが強いなんて」


「どうしましょう、総理。このままじゃ少年にこびるか

 破壊のかぎりを尽くされるしかないですよ」


結論を求められた総理は苦渋の判断をくだした。


「本体を……やるしかない」


その日の夜、少年の家には隠密部隊が音もたてずに侵入した。

少年は1人の重大テロリストとして処理された。



「消えた! 巨大ロボが消えた!!」



作戦は成功し巨大ロボは跡形もなく消失した。政府の大勝利。

大きな脅威を退けた先に待っていたのは、膨大な数の仕事だった。


「総理! では破壊された建造物の賠償金はどうしますか!?」

「総理! マスコミが今回の騒動についての会見を求めてます!」

「総理! 少年を消したことによる今後の対応を教えてください!」

「総理! リモコンとって」

「総理! 海外から今回の巨大ロボについて研究依頼が来てます!」


「総理!」

「総理!」

「総理!」

「総理!」

「総理!」 ...



「あああ! もう限界だぁ!!!」


総理のストレスが限界になったとき、会議室がソレによってぶち壊された。。




「総理、2体目の巨大ロボが出現してしまいました……。どう対処しましょう」

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