ブラッディ×シック

比名瀬

Ⅰ . 異形

第1話 『プロローグ』

人知れず世界に蔓延る病魔。

この病魔に侵された者は、急激に細胞が劣化していき、数ヶ月で死に至る。


そんな死の病の治療法として、たったひとつの方法があると噂されていた。


それは、

吸血鬼の血液を患者に飲ませる事。


だがそれは、吸血鬼という化物と対峙しなければならぬという事。


普通の人々にはそんな事は不可能だ。


では、どうやって彼らはその治療薬の血液を手に入れるのだろうか?


◆◇◆◇


「さ〜ぁて、この町では売って売ってぼろ儲け。次の町へと向かうとしようじゃないかぁ?」


白いスーツに身を包み、道化師のような化粧をしたひょろりと縦長い長身の男が、札束をこれまた真っ白な鞄に無造作に突っ込んで立ち上がる。


「それでは、御機嫌よう!さようなら!もう二度と顔を合わせる事もないでしょう!」


両手を大きく広げて仰々しくお辞儀をした後、ウィンクと共にニヤけた口元から声を出す。


「何せお客様も患者様も、死んでしまっていますから」


バタリと音を立てて扉が閉じられて、室内には不気味な暗闇が包み込まれる。


上半身を食い千切られたように真っ二つとなった下半身だけの死体と、ボコボコと膨らみ続けながら異形に動くナニかが残されて。

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