短歌もどき。そのご。

桜枝 巧

口紅、賢治、列車

口紅と賢治を鞄に放り込み知らない列車に揺られているの



海まではあと五十キロ  飛んでゆく紙飛行機を目で追いかけた



十九年ぶりに飛んでみたくて履くジーンズよりは軽いスカート



汽笛鳴る北の夜空と牛乳がひとりぼっちのザネリを見ている



君は変わらなくていいよというような空の失い方を教えて



イヤフォンを脳幹まで押し込んだから爆ぜてよ、ギターリフの棘先



後悔を殺した五秒前の濃い口紅の痕くすくすなぞる



青に溶ける君は「好きだ」と言い、僕は砂浜にただ足を沈めた



霧雨に似た優しさは持てなくてせめて桃だけ丁寧に切る




朝焼けがとってもキレイだったから明後日あたりアタシは死ぬの

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