69話黒と白の物語



 時は15年はさかのぼる、王国から遠く離れた貧しい村の話である。


 村外れの草原で遊ぶ2人の少年……2人の手には木の棒が握られており、剣技遊びの真っ最中であった。


 2人の片割れは背の高さはその年頃の仲間たちより大きく、鋭い攻撃でもう1人を圧倒している。


「やはりキルドレックス兄ちゃんには敵わないや!」

「アルだってお前の年頃である11才の他の連中に比べれば充分強いぞ!」


 太陽が傾き夕暮れになり始めていた。

「そろそろ父ちゃんが狩から帰ってくる時間だ……どんな獲物を狩ってきたか楽しみだな!」


 村に戻り家の前に行くと、父親がホーンラビットの死体3体を家に運び入れているところだった。

「やったー今日はごちそうだぁー!」


 どこにでもある村に生まれた暗黒のキルドレックスと白のアルカインは狩人である父親のマルシアスと母親であるサルシアサーナに貧乏ではあるが幸せに育てられていた。


 そんな彼らに不幸が襲いかかる。父親のマルシアスが村の会合に出席した時の事である。

 村長の発言がきっかけとなる、

「この村は王都から一番離れており、不便もあって過疎化と貧困が続いておる、このままでは年貢すら納める事が出来んようになりかねない、そこで考えたんじゃが、麻薬を密栽培して闇の組織に密売して村の情勢を立て直そうと……」


 マルシアスがおもむろに立ち上がり、

「断固反対です! 麻薬は人を廃人に追い込むと言うではありませんか? そんな物を栽培するなんて……」と反対意見を投じるが、大多数の賛成多数にて押し切られてしまう。


 それからマルシアスやその家族に対する村人たちの態度が豹変した、狩ってきた獲物の肉を他の村人の作物と交換に行っても応じて貰えない、病気になっても薬草を売ってもらうことが出来ない

……いわゆる村八分という状態に追い込まれたのである。


 そして、マルシアスがレッドビッグベアーに襲われ瀕死の状況で帰ってきた、血まみれの父親をサルシアサーナとキルドレックス、アルカインが竹棒に服を通して急造で作った担架を使って、

村に一つだけある教会の聖女様のところに連れていった。


「貴方達に施すことは何一つありませんわ! この人達をつまみ出しなさい」


 こうして父親の死が訪れ、それと同時に母親の激しい心労が重なり、追いかけるように母親も亡くなってしまうまではそんなに時はかからなかったのである。


 口減らしのために村を追われた兄弟は村への復讐を誓っていた。森の中でたくましくもサバイバル生活を送っていた彼らの目の前に現れたのは、

黒い衣装をまとった、青白い不気味な顔をした男性であった。

「我が名はメフィストフェレス、こう見えても上級悪魔だ。お前達から猛烈な負の感情を感じたのでここに来た」


 キルドレックスは悪魔と聞いても恐れの表情に変わらずにその生物を見据える。

「悪魔なら契約で僕を強く出来るか?」


「どうやら訳ありの様子ですね! 来たかいがありました。では詳しい話を続けましょう」




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