第41話エルフ兄妹と1匹の王国奮闘記! ギルド編②
ルーク、アリシアのエルフ兄妹は王国内でエルフ種族の名声を高めるべく、コタローを引き連れ王国ギルドの門を開けたのである。
受付嬢のマリッサが胸を煌めかせながら、2人のエルフを見つめる。
ギルドの敷地内は冒険者の食事や情報交換の場となっており、昼間だというのに酔っ払いもいる場末の酒場の様子で数十人が席にいた。
ルークが受付を見つけマリッサに向けて歩き始めたが、立ちふだかる荒くれ者達5名、
「おい! あんちゃん達! ここは腕自慢の冒険者が来る場所だぜ! あんちゃんみたいなひ弱そうな色男には似合わないぜ! その後ろにいる美人の彼女だけ置いて去りな!」
「はっはっは!」
「なんなら犬も置いて行ってくれ、今夜のオカズにちょうど良いわ、はっはっは!」
150キロはあろう太った40才くらいの荒くれ者を筆頭に似たような体格で不精髭を伸ばした連中が笑いまくる。
不敵な笑みを浮かべたルークが
「ほう! 力が全てなのか? 面白いじゃないか」
150キロの巨体の首元を掴み、片手で天井近くまで吊り上げた。
「……」あんぐりと口を開けて驚く男たちの隙をついてアリシアが男達の一人の腰の剣を奪い、喉元に突きつけた。
「なんだこいつら! 強いぞ!」
騒然した雰囲気の中で武装された兵士が「何事か!」と近づいて来た。
荒くれ者の多いギルドではいざこざが多い為、王国の兵士が配備されている。
ギルドの受付嬢マリッサは気がついたら、兵士とルーク達の間に割って入っていた。
「兵士さん! エルフさん達は被害者ですよ、悪いのはこの冒険者達の方ですから!」
荒くれ者の冒険者を見た兵士は「またお前らか? たかだかC級冒険者の分際で……今度問題を起こしたら、資格剥奪してやるぞ!」
すっかり大人しくなった冒険者達は「すみません!」と席に戻って行った。
ルークとアリシアは兵士と受付嬢に
「助かったありがとう! 騒ぎを起こす気は無かったのだが……私はルーク、こいつは妹のアリシアだ! 見ての通りのエルフだ!」
兵士が「私は警備で来ている王国兵士のロバートだ、しかしルークさんは巨体の冒険者を片手で持ち上げたり、アリシアさんも只ならぬ動きで、かなりのやり手と見た! ギルドの冒険者登録に来たのか?」
「そうだ」アリシアが答える。
マリッサが満面の微笑みを浮かべながら、
「受付のマリッサです! あなた方のような使い手がギルドの登録に現れたのは久し振りですわ、
ではギルドについて説明しますね……」
金髪のロングヘアーの22歳くらいの美人さんだ。
2人が聞いた説明はおおよそに於いて、晃がルークに前もって説明した内容と一致していた。
「やはり俺たちもEランクからスタートなのか?」
「お二人さんの様な使い手なら、上からスタートしても良さそうなのですが決まりごとですので……ただし何回かEランククエストを速攻でクリアすればCランクに推薦することは出来ますわ! Bランクに上がるには教官の実戦試験がありますの! なにぶんBランククエストは命を落としかねない凶暴なモンスターが対象になって来ますので……」
「教官とは先程の兵士のことか?」
「いえいえ! 兵士は王国を守るのが精一杯なので、王国周辺のモンスター退治は冒険者がやることになってますの、教官はAランク以上の元冒険者達が登録されてますわ、2階に行けばレストランがありまして何人か居ますけど、2階にはBランク以上の方しか入れないのですわ!」
「なるほどな、とりあえずCランクに上がって教官のテストを受けるのが当分の目標だな!」
「ではお二人をEランクに登録しますわ、あと珍しくお供モンスターも連れていますのね? まだ小さくてかわいいけど」
「コタローのことか? こいつも立派なパートナーだ!」
「冒険者の中には使い魔を持つ魔法使いやモンスター使いもいますので、珍しくはありませんわ、
モンスターはパーティーの人数には計算されませんですのよ、はい! これがEランクの証よ、首からかけてね、このカードには倒したモンスターや捕獲したモンスターが記録されるのでクエスト達成の証にもなりますわ!」
首掛け付きのシルバーカードを渡された、Eと印字されている。
「クエストボードはあちらにございますわ、受けたいクエストがありましたら張り紙を剥がして、私に渡してね、それではお二人の活躍を期待してますわ!」
Eランクと書かれたボードがあり、張り紙を次から次へと見ていく!
Eランククエストは何でも屋みたいな感じの内容が多く、個人からの依頼がほとんどで報酬も安い、ギルドの仲介料は銀貨1枚、冒険者への報酬は銀貨3〜5枚が相場である。
「兄者さすがにEランククエストだけあってショボいな! ほとんどが迷子のペット探しだな!」
「ははは! 千里の道も最初の一歩から踏み込まなきゃ始まらないものさ! これなんかどうだ、
おばあさんが長年連れ添ってた白猫が突然いなくなったらしい、ミャオちゃんの似顔絵もあるぞ
」
「兄者、猫探しなんて何日かかるかわからんぞ」
「大丈夫さ、任せろ!」
ギルドで渡された地図を元におばあさんの家を訪れる、決して裕福そうではない家である。
ヒューマンの寿命は50年程と聞くが、それに近いお年を召しておられる女性が現れた。
「あらエルフの冒険者さんなんて珍しいわね! ミャオちゃんをぜひとも見つけて欲しいの……お願い!」
「まかせてください! ミャオちゃんの何かお気に入りの物あります?」
おばあさんが何やら布切れを持ってきた
「この毛布がミャオちゃんの愛用の物なのよ……」
「コタロー匂いを覚えろ!」
コタローが毛布に向かってクンクン匂いを嗅ぎ始めた……「ワン!」尻尾をプルプル振る。
「よーし! 匂いを追うんだ!」
アリシアが感心しながら、「なるほど兄者! コタローの嗅覚を利用するのじゃな!」
「ワン! ワン!」コタローが走り出す。
「ミャオちゃんをよろしくお願いします」
おばあさんの声を後ろに聴きつつ、エルフ兄妹も走り、コタローの後を追いかける。
道行く人達も何事かと振り返っている。
街中をひたすら10分ほど走り、町外れのごちゃごちゃした貧民街(スラム)にたどり着いた。
「なるほどこの辺りの家並みはかなり入り組んでいるな、ミャオはきっと迷い込んだに違いない!」
石造りの長屋がぎっしりと建ち並ぶ間の細道を行く、すると広場がありその隅に日向ぼっこをしている白猫! コタローを見ると、ウンウンと首を縦に振った。
ミャオがこちらに気付き警戒態勢をとる、「ミャオちゃんーおいでー! おばあちゃんに頼まれてきたのよ!」アリシアが満面の笑顔でおいでをするが、ミャオはビクッとして、近くの塀に身軽によじ登ってしまった。
「なかなか猫だけに俊敏だな、ははは!」
ルークが笑う。
「くっ! 私の天使の微笑みを警戒するとは……」アリシアが悔しそうにつぶやく。
「ワン!」コタローが大ジャンプして、ミャオを塀から追い立てる、さすが子供とはいえ、魔物スピードウルフだ!
「今だ! 土の精霊よ……ウォール!」
アリシアの魔法が広場に降りたミャオの回りを土の壁が覆う。
土の壁をよじ登ってジャンプしたミャオに「風の精霊よ……ウインドウォール!」
ルークの風魔法に捕まった白猫はあえなくルークの腕の中に……「捕獲完了!」
ミャオをおばあさんに渡してギルドに向かって歩いているルーク達であった。
「兄者! あのおばあさんの喜びようったらすごかったな!」
「あんなに頭を下げられたのは初めてだ、やはり人助けは気持ちがいいもんだな!」
ギルドの入り口から顔やら腕を腫らした若い男女5人パーティーが飛び出て来た「チックショー! 大変な目にあったぜ、Eランククエストと聞いてたのに!」
「本当よ、死ぬかと思ったわ! クエスト断念の罰金まで取られたわ、やはり無理せずペット探しに専念しましょう」
「そうだな! とにかく薬屋行かないと!」
ルーク達とすれ違って行く、ギルドの門をくぐったルークは受付嬢マリッサに
「何やら騒がしいな、何かあったのか?」
「そうなのよ、ある貴族の領地の敷地内の沼地に30センチの大蚊が大量発生したのよ、大蚊自体は私達普通の住民が棍棒でぶったたけば死ぬから、
Eランク指定モンスターなのだけど、刺されたらものすごく痒いし、どうやら1000匹以上いたみたいね、そんなに数がいるとなると、Cランククエストに変えなきゃいけないわね……」
それを聞いたルーク、アリシアは目を合わせ、
ニヤリとする。
「待ってくれ、そのクエスト俺たちに任せてもらえないか? 猫の依頼はもう終えてきたし」
「え! いいの? 確かにカードには達成が記録されてますわね、さすが私が目を付けたエルフさん達だけのことはあるわ、スピード記録ですわね、では大蚊退治もお願いしてよろしいかしら?」
「任せて下さい!」
かくして、自身満々の笑みを浮かべながら貴族の領地に向かうルーク、アリシア、コタローであった!
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