ミッション14—3 監禁
ああああの前に立ったあああいは、ああああの腹を殴り気絶させる。
気絶したああああはあああいに抱えられた。
「おいおいアイツ、ああああをどこに連れいくつもりだ?」
「変なことをされたら困る。追跡しよう。取り返そう」
「とは言っても、あんな人殺し筋肉からどうやってああああを取り返す気だ?」
「……あああいを手伝う」
「その顔、悪巧みの顔だな。なんとなくお前のやりたいことは分かったぞ」
以心伝心、早速行動に移るファルとレオパルト。
レオパルトは車の影から飛び出し、あああいに話しかけた。
「あああいさん! 聞いてくれ!」
「ああん? ミンチ希望者か!? ヒャッハーー!!」
ガトリングの銃口を向けられ、ファルとレオパルトの背中に冷や汗が伝う。
それでもレオパルトは、なんとか話を続けた。
「逃走用の車はあるのか!? ないなら僕たちが用意しても良い!」
「……逃走用の車だと? ほお、ミンチにするにはまだ早いみてえだな! さっさと車のところに案内しろ!」
「こ、こっちだ!」
想像以上にあっさり、こちらの話に乗ってきたあああい。
ファルとレオパルトは困惑しながらも、ああああを抱えるあああいを、ラムダの乗るワゴン車に案内した。
途中で襲ってきた警官NPCは、あああいによって皆殺しだ。
ワゴン車に到着すると、あああいはすぐさまワゴン車に乗り込み、それを追うようにファルとレオパルトもワゴン車に乗り込む。
これにラムダは目を丸くした。
「わお! あああいさんが乗ってきました! ああああさんもいます! どういう状況ですかこれ!?」
「てめえは……ゾンビ騒ぎでガトリング撃ちまくってた下着のクレイジーな姉ちゃんか!? てめえが運転手とは、最高に興奮するぜ! ヒャッハーー!!」
「覚えられてます! わたし、あああいさんに変な風に覚えられてます!」
「全部事実だろ! それよりラムダ、早く出発しろ! 今ならまだ警察の追跡を振り切れる!」
「了解です! シートベルト締めましたか? 飛ばしますよ!」
言い終わる頃には、ラムダはアクセルをベタ踏み。
急加速したワゴン車は、江京の街を爆走だ。
街道を走る数多の車を縫うように避け、曲がる際は必ずドリフトするワゴン車。
右に左に揺られるファルとレオパルトは恐怖のどん底。
だがあああいは、ラムダの運転にさぞご満悦の様子である。
しばらく街を走り、駐車場で車を乗り換えたファルたちは、あああいの案内に従いあああいの隠れ家へと向かった。
隠れ家に向かう最中、あああいは警察に電話をかける。
「ああああとかいう女は俺が拉致した。明後日までに身代金1億を用意しろ。でないと、あの女は俺のおもちゃになって、影も形もなくなっちまうぜ。ヒャッハーーー!!!」
随分と古典的な身代金要求だ。
しかしああああは警察の暗殺対象なのだから、この要求は黙殺されるだろう。
なんというか、ああああもあああいもドンマイである。
数十分後、あああいの隠れ家である江京郊外のとある工場に到着したファルたち。
意外にも、あああいはたった1人で、この工場に住んでいるらしい。
あの激しいアドレナリンを、どうやって1人で消化しているのだろうか……。
「おいてめえら! 女をあの部屋の中に縛り付けておけ! 逃げたらミンチにするぞ! ミンチにしてハンバーグにして犬の餌にしてやる!」
「はいい!」
いつの間にかあああいの雑用係になっているファルとレオパルト。
ラムダはあああいに仲間と認められ、あああいの歓迎を受けていた。
ああああを連れて、ファルとレオパルトは指定された部屋にやってくる。
狭いながらも、汚れひとつない整理された部屋。
そこに似合わぬ鎖が垂れており、ファルとレオパルトはああああをその鎖に縛り付ける。
「あああい先輩! 終わりました!」
「よし、てめえらはその女を見張ってろ。もう1度言うが、逃げたらてめえらは犬の糞になるぞ」
「了解です!」
あああいへの恐怖に屈したファルとレオパルトは、素直に指示に従う他ない。
こんなところで死ぬわけにはいかない。
「よお姉ちゃん。俺はお前が気に入ったぜ。お前がどれだけクレイジーな女か、聞かせてくれよ」
「楽しそうですね! いろいろお話しましょう!」
工場の奥から聞こえてくる、ラムダとあああいの会話。
明らかに、2人とも楽しげである。
ミンチへの恐怖で動けぬファルとレオパルトとは大違いだ。
「ラムダのヤツ、なんで人殺しマッチョと楽しそうに会話なんかしてんだ?」
「理由は簡単だろ。ラムダがクレイジーだからだろ」
「同類同士ってことか」
「そう考えると、ファルはよくラムダと一緒にいられるな。昔のお前ならあり得ない」
「成り行きだ。仕方なく一緒にいたら、慣れたんだよ」
「ファルが女子に慣れるなんて、異常事態だ。天変地異レベルだ」
「バカにしてんのか?」
「いや、半分羨ましいんだ。残りの半分はバカにしてるんだ」
「結局バカにしてるのかよ……」
暇なファルとレオパルトは、こちらもこちらで会話に花を咲かせていた。
よく分からない事態になってしまった今、会話する以外にやることがないのだ。
*
太陽は沈み、夜が訪れた。
この時間の江京郊外は静かである。
聞こえてくるのは、虫の鳴き声だけだ。
レオパルトは眠りこけ、暇を持て余しケータイをいじるファル。
すると、ラムダがファルのもとにやってくる。
「ファルさんよ、つまらなそうですね!」
「ああ、暇だ。それよりラムダ、あああいに変なことされなかったか?」
「変なことですか? ファルさんが想像してるような、エッチなことはされてないですよ!」
「ああそう。なら良かった」
「エッチな想像してたことは否定しないんですね!」
「で、あああいと何してたんだ?」
「お話です! 乗り物のお話とか、ゲームのお話とか! あああいさんって、思ったより優しい人でしたよ!」
「あのムキムキ人殺しが優しい? 信じられないんだが……」
ラムダの言うことを鵜呑みにしてはならない。
あああいが優しいなどという言葉は、忘れることにしたファル。
話が途切れると、ラムダはファルに顔を近づけてきた。
やはり見た目だけなら美人、大きな胸もファルに当たりそうだ。
ラムダの人となりを知っていながら、これにはさすがのファルもドキドキしてしまう。
「ファルさんよ、暇なら、私とお話ししましょうよ!」
「良いけど、なんの話をするんだ?」
「美しいこのわたしに、何か質問とかないんですか!?」
さっぱりとした髪をかきあげ、ファルの質問を待つラムダ。
少し考えてから、ファルはぶっきら棒に言った。
「……お前の乗り物好きのルーツ、正確に言えば頭のおかしさのルーツを知りたい」
「悪口言われました! でも答えます!」
笑顔を絶やさぬラムダは、快活な口調で質問に答えた。
「わたし、現実世界でたくさんの乗り物に乗りました! 車から電車、飛行機に船、ヘリコプター! 宇宙ロケットと潜水艦以外は全部乗ったと思います!」
「マジか」
「マジです! でも、どの乗り物も自分で運転したことはないんです! いつも運転手さんがいたんです! だから、わたし、思う存分に乗り物を運転してみたかったんです! そのために、いろんな乗り物ゲームをやりました!」
ラムダの乗り物愛が、楽しそうな口調から十分に伝わってくる。
運転手さん、という単語は少し気になるが。
「そんな時、イミリアの広告を見たんです! 何百種類の乗り物が自由に乗れるって宣伝されていたんですよ!? 買うしかないじゃないですか! もう、パパの力を使ってでも買うしかないじゃないですか!」
イミリアの広告を見たラムダの反応が、ファルには容易に想像できた。
パパの力、という単語は少し気になるが。
「イミリア発売後は、毎日乗り物で過ごしました! ログアウトできないとか知ったこっちゃないです! でもわたし、現実世界の交通事故が原因で強制ログアウトされちゃったんですよ!? ひどいですよね!?」
「いや、幸運だったと思うのが普通だと思うが」
「幸運なのはこれからですよ! 現実世界で退屈してたら、パパがサルベーションに参加させてくれたんです! もうわたし、大喜びです! またイミリアで乗り物乗り放題ですよ! しかも乗り物出し放題のチート付きですよ! パパ大好きです!」
頭のおかしい要因は、単なる乗り物好きという純粋なもの。
ラムダはゲーム好きというよりも、乗り物好きなのだ。
乗り物好きが彼女をイミリアに誘ったのである。
ところでだ。
ファルは先ほどから気になっていたことをラムダに問いかける。
「なんかさっきから、お前の父ちゃんが普通じゃない気がするんだが……」
「そりゃそうですよ! パパはすごい人で、わたしはお嬢様ですから」
「冗談きついぞ。シャムの真似か?」
「本当です!」
言い張るラムダだが、彼女の話を鵜呑みにしてはならない。
だからこそ、ファルは聞く耳持たなかった。
一瞬だけ訪れる沈黙。
この沈黙を破ったのは、ラムダのいつもよりも抑えられた口調での質問である。
「ファルさんよ、迷惑ばかりかけるわたしと出会えて、良かったですか?」
「どうした? らしくない質問だな」
「……良かったですか?」
「いつもいつも場をめちゃくちゃにして、こっちは迷惑被って、死にかける。ラムダと一緒にいるといつもそうだ」
「……良くなかったんですか?」
「だけど、お前と一緒にいると楽しい。友達とワイワイゲームやるのは、レオパルト以外じゃお前がはじめてだ」
「それは……出会えて良かったってことですか?」
「ああ」
「回りくどいです! もっとはっきりと答えてくださいよ!」
「じゃあ、お前と出会えて良かった」
「おお! はっきり答えられると照れます! ファルさんの顔が見られないです!」
「お前が言えって言ったんだろ。こっちも照れてきたぞ……」
ファルとの近い距離を維持しながら、赤くなった顔を背けるラムダは新鮮だ。
いつもと違うラムダのそんな姿に、ファルも気恥ずかしい気分でいっぱいである。
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