創作論・評論【思った事】

炭酸水

創作論・評論【思った事】

最近はすっかり日が落ちるのが早くなってきましたね。みなさんいかがお過ごしでしょうか、カクヨムで一足早い秋の読書?それとも創作?これを見てるならカクヨム甲子園の応募に足を踏み出せずにいる…、といったところでしょうか。


今回は、というかこれが私の初めての投稿となります。カクヨム甲子園、大変人気なようで、SNSで検索をかけると数多くの宣伝で溢れています。その中でも目立ったのが、ロング部門とショート部門で二冠を達成した方の作品でした。私の初めての投稿はこの二冠を達成した方の作品の批評です。ロング部門で1位に輝いた、「12メートル下で笑う血だらけの彼女」を、僭越ながら批評させて頂きます。


【12メートル下で笑う血だらけの彼女】

かなりの長い期間、1位の座にいるようです。素晴らしいですね、1位にいるのなら読者は「これは絶対面白い!」と思わずにはいられないわけですね。ではここから批評に移らせて頂きます。


まずは良い点からです。

登場人物が少ないため、誰がどんな会話をしているのか分かりやすい点です。見たところW主人公でしょうか。アマネとリンが主体となって、図らずも噂に巻き込まれていく…という発想は大変良いと思います。


また学校が舞台のため想像しやすかったです。カクヨムには発想はいいのに登場人物が多かったり、複雑な舞台であったりと読み手の気力を削ぐものが多くあります。ですがこの作品は舞台は学校!登場人物は2人!そして恋愛!この三拍子揃えば読みやすい、親しみのある作品になると思います。ど定番、テンプレートですがテンプレートだからこそ人気が出るのでしょう。定番中の定番に「ループ」というイレギュラーを入れる事で、物語がどんどん面白い方へ転がっていくんですね。その発想は大変素晴らしいと思います。


もう1つは1話1話の区切りがいいところです。「この先どうなってしまうんだろう!」という読者をいい意味で煽る技法です。1話から2話へのもっていきかたは良いですね。

あとは細かい点ですが、改行の際に1マス開けている事、「?」の後に半角スペースを入れてあげていることです。


まとめると、大変読みやすかった、といった感じです。



ではこの作品を読んでいて気になったところを書かせて頂きます。気分を害すつもりはないので悪しからず。


【気になったところ】

まずは何よりは登場人物の口調です。

発想、表現の仕方以前の問題です。

1話で「明日で卒業かー。高校生活も案外一瞬だったわね」と、リンが喋るシーンがあります。「〜だったわね」という語尾から私は、「リンはお淑やかで丁寧な言葉遣いをする」という印象を受けました。ですがその前の言葉は「〜か」です。

そもそもリンはどのような性格なのでしょうか。「リン」という自称美少女の情報が少なかったように思えます。容姿については書いてあるのですが、リンそのものについての文章が少ないです。想像がしづらいです。

読み手にキャラクターの全貌を伝えるには、語尾が重要だと私は考えます。今まで男のように振舞って高飛車だった人が、次のシーンでは「〜ですわ」などというお嬢様のような人になっていたら迷ってしまいますし、読んでいて酔ってしまいますね。「〜か」といった後に「〜だったわね」と続けていたため、違和感を覚えました。小さなことですが、読み手にとっては大事件です。なにせ語尾はアイデンティティ、その人を位置づける容姿よりも大きな情報です。


また表現の仕方が気になりました。

「ワタシ」「アナタ」「キミ」という、一人称二人称がカタカナになっています。何か意味があって意図的にカナにしているのでしょうか。ホラー独特の奇妙で恐怖を煽るようなカナは、時に読み手にも恐怖を味わわせる手立てとなります。ですが、この作品にそんなにホラー要素はあるのでしょうか。

身の毛もよだつような描写はありましたか?アマネの死に対する恐怖は伝わりましたか?エピローグでは漢字に変換されていたようですが、読み手の中にそこに気がつく人はいましたか?読み手が気づかなければどんなに壮大なギミックでも意味はないに等しいです。アマネの恐怖がどの程度のものだったのか、違和感で済んだのかはたまた嘔吐してしまうほどだったのか。後に嘔吐するアマネからどの程度の恐怖だったのかは伝わりましたが、登場人物の行動よりも当時の風景描写が物語る場合もあるのです。


考察をさせて頂きます。1話の時点でループの「きっかけ」が生まれる時点でカナになっています。カナはループの世界を表し異常であることを伝えようとしていたのではないのでしょうか。ループが終わり、エピローグに入ると漢字に変換されていることから正常な世界に戻ってきた、といったところでしょうか。

ギミックが施されていてもそれに気がつかないのであれば、カナにする必要はなかったと思います。正直なところを言いますと、ただただ読みにくいばかりでした。


もう耳が痛いとは思いますが、もう少しお付き合いくださいませ。


また細かいところになるのですが、改行の仕方です。ぱっと見で「ああ、これは行を開けすぎなのではないか」と思ってしまいました。

登場人物の重要なセリフや印象づけるために、セリフとセリフの間を空けることは多々あります。ですが、あまりにも空けすぎではないでしょうか。

例えば2話の母へかけた言葉です。「朝食はシャワーを浴びてから食べる」、これになにか重要な点があるのでしょうか。それとも読みやすさを考慮したのでしょうか。違いますよね、見たところセリフが入るとそれが重要であろうとなかろうと、行を開ける癖があるのでしょう。適度な改行は読み手のテンポを上げ、過度な改行な読み手に不安感を。登場人物の心情を書くことは、大切なことだとは思います。ですが今後は登場人物だけに視点を合わせるのではなく、読み手を意識した文章構成を考えて見てはいかがでしょうか。


最後にもう1つだけ。

終わり方に疑問を覚えました。

もしかしてこれは本当は、バットエンドだったのではないでしょうか。

ループを終わらせるには、元凶がどうにかしなければならない。この理屈には納得しています。死と引き換えに願いが叶うという噂が元でループが始まるのですが、願いの代償が死ならば、死をもって解決するのではないでしょうか?そもそも解決方法はアマネが模索したように、死ぬことです。ですがエピローグではリンは車椅子に乗って登場します。そこに少しの違和感を感じました。ハッピーエンドも構わないのですが、あれほど死ななければならないと長々とアマネも説き伏せていたのに、どうしてリンは死んでいないのか。驚き以前にがっかり感がありました。そこが違和感へ繋がるのだと思います。



【最後に】

長々とした文は読み手にとってのストレスです。かくいう私もこんなにも長々と書いてしまいました。

以上が私の評論です。貶したい訳ではありませんし、誹謗中傷はもってのほかです。ただ、多くの人に読まれているのですからよりよい作品にしたいですよね。

細かいところを指摘してばかりですが、改行に語尾、アイデンティティや文章能力は基礎中の基礎です。そこを意識して直せばさらに良い作品へと変貌するのではないでしょうか。応援コメントやレビューにはあなたを褒めちぎる言葉がずらり並んでいます。フォロワーの人はあなたの書き方が好きなのか、それとも作品だけが好みなのでしょうか?どうせならば書き方が好き、と言われた方が嬉しいですよね。固定ファンはいつの時代も私たちを励ましてくれる、重要な存在。どんな人が読み手なのか、それはもう作者のアイデンティティでもあります。


拙い文章ではありますが、ここまでお付き合い頂きありがとうございます。

それではまた、どこかでお会いしましょう。


付け足しとするならば、4話、誤字があるようです。見直して見てはいかがですか?


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