虫の知らせ
@zhenyoumei7
前編 帰らなきゃ!
これは20年ほど前私が体験した不思議なお話です。
今までも何度か不思議な体験はしたものの夢なのか現実なのか・・・
この頃私は急な胸の痛みが何度もあり検査の結果、心臓肥大と診断されました。とは言ってもたいしたこともないようで経過を見ていこうとなり持ち運び心電図の様なものを付け痛みがあればボタンを押すという様な物でした。
ある日、主人と子供の3人で食事をしてる最中
「おじいちゃん!帰らないと!」
と頭で考えたり思い出したりと言うよりも先に声に出していました。
主人も何事!?かと聞いてきましたが
「今月中休み取れる!?今年は絶対おじいちゃんの所帰らないと!」
「あっ!みんなにも連絡しないと!」
と実家や親戚のおじさんや滅多に連絡しない親戚のお兄さん達にも電話をかけた。
もちろん
「急にどうしたの?今年は帰らないよー」と断られるが
「今年は帰らないといけない!どうにかならない!?」と説得したけど皆んな無理だと言うことで諦めました。
私達は関西在住、おじいちゃんは九州(父方)
すぐに帰れる距離でもない。予算もかかるし、急には無理かも知れない。
しかしそんな事よりとにかく「私は子供を連れて帰る!初ひ孫見せてあげないと!」と理由も言わず必死な状態を見て主人は休みを取りそれから1週間後、車でおじいちゃんの家まで向かう事になりました。
帰る日が決まりすぐにおじいちゃんに電話をかけるとすごく喜んでくれました。
おじいちゃんの家に行ったのは私が小学校くらいが最後。ナビを頼りに途中まで着いたが小さな村なのでおじいちゃんの家まではナビにも出なく記憶に残る風景を確認しながら無事辿りつけました。
着くとおじいちゃん、おばぁちゃん、おじさん、おばさん皆んなで出迎えてくれました。
おじいちゃんもすごく元気そうでした。
おじいちゃんとたくさん話しもしたいけど、方言がきつくおばさんに通訳をしてもらわないとわからないくらいでした。
しかしあれだけ必死に帰らないと!と思っていた事すらすっかり忘れて九州を満喫。
次の日朝になるとおじいちゃんがソファーに座り私達が起きてくるのを待っていてくれました。
その次の日もまた同じ場所で静かに私達を待っていてくれました。
その日おばさんが
「おじいちゃん元気だね〜滅多に下に降りて来ないのに孫達帰ってきてから毎日来てるね〜〜やっぱり孫パワーは凄いね〜〜」
と何気ない会話。
詳しく聞くと、心臓も悪いし足腰も弱って滅多な事では一階に降りてこないとの事。
昔からおじいちゃんとおばあちゃんの部屋は二階にありそこで生活していて、階段も急で私でも怖いくらい。
しかしそれほど気にもとめずのんびりした日を過ごし帰る日も皆んなで見送ってくれました。おじいちゃんも外に出て見えなくなるまで手を振ってくれ、「おじいちゃん元気で良かったね」と満足してくらいに帰ってきました。
すでに夜8時くらいになってましたが、どうしても喉が渇いたので家に着く前にコンビニに寄りました。
買い物の最中、今までにないくらい胸が痛み出し倒れ込むほどでした。しかし少しして落ち着いたかと思うと何もなかったかのように普通に買い物を続け9時前に帰宅。
「あぁー着いたぁーほんとおじいちゃん元気で良かったぁー!」と主人と会話しながら帰宅し鍵を開けるとタイミング良く電話が鳴った。主人が出てくれたが無言ですぐに私に受話器を渡した。
それは私の父からでした。
「もしもし〜今帰ってきたよ〜」
とウキウキで話すものの父は
「落ち着いて聞いて!とりあえず落ち着いて!」
「うん!で?何?」と呑気な私の返事に
「落ち着いて聞くんやで!」
と念押しした後
「おじいちゃんが少し前に亡くなった」
と言うのです。すぐに理解出来なかった私は「朝帰る時おじいちゃん元気に見送ってくれたよ!」
「すごく元気だった!」
父は
「お昼頃体調が急変し病院行って夜8時頃に心筋梗塞で亡くなったらしい」と言うので確認の為おばさんに電話すると「事情わかった?今忙しいから切るね」と電話を切られましたがここでやっと理解出来たかのように泣き崩れてしました。
もともと心臓も悪かったのでおじいちゃんは孫やひ孫に会う為無理してしまったのが原因なのかと落ち込んでしまいました。
母と父は明日九州に帰ると言うので私も帰る!と言い荷物をまとめ直し翌日飛行機で帰りました。
おばあちゃんがおじいちゃんの日記を見せてくれました。
毎日書かれてありましたがほとんど、
『朝、湯沸かし』みたいな事しか書いていなくて
おじいちゃんに電話をした日には
『朝、湯沸かし。孫から電話。』
帰る前の日は
『朝、湯沸かし。孫来る。楽しみ。』
と書いてくれていました。
それが最後の日記でした。
「初ひ孫も出来て写真見ながらよくあんたらの話ししちょったよー。
じいちゃん、孫とひ孫に会えてすごく喜んじょった!よく会わせに来てくれた。ありがとね〜」
と励ましてくれました。
そして思い出したのです。
『帰らなきゃ!』と必死になっていた自分を。
いまだにあの時の感情や必死さ、なぜ急にそう思ったのか自分でもわかりませんが、これが虫の知らせと言う事なのでしょうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます