第13話 カボチャのカレー
「カレー、まだ食べてないの?」
「そうだよ。オネエチャンが起きるまでずっと待ってたんだ。こっちはヒモジイ思いをしてさ」
「本当は出来たてが一番いいんだけどね。それはまた今度ね」
その、また今度、がずっと遠くにある気がした。だけど、こう答えてしまった。
「うん、また今度」
木の器に木のスプーンが用意される。ご飯の上に、カボチャの薄切りの天ぷらが三個乗せられた。それから北海道のスープカレーのような、タイのグリーンカレーのような、液体状のカレーがかけられる。
大きなちゃぶ台の上にカレーが置かれた。車掌さんはベッドの上を飛び跳ねながら、カレーの入った木の器を持っている。少し長い間。わたしが一人、口にしようかどうか躊躇っていると、女の子が
「いただきます」
ああ、そうだ。ご馳走を食べる時は、何時もそう唱えるんだった。
わたし、男の子、車掌さんで三人ばらばらに
「いただきます」
「いただきます!」
「頂きます」
カレーソースはそのまま食べるとピリッと辛い。それも持続的な辛さじゃなくて、瞬間的な刺激がする。それだけではつらい。けれどカボチャと一緒に食べると、その刺激がカボチャの甘味と重なって、何とも幸せな味がする。天ぷらの衣にカレーソースが染みて不思議な一体感がある。
車掌さんが跳ねながら器用に食べて
「いやぁ、何時もながら美味しい。なんとも南国に来たような気分にさせてくれますな」
男の子が
「うん、カボチャがホクホクしてる。いい味だよ 」
「ねぇ、お姉ちゃんはどう?」
わたしは慌てて
「おっ、美味しいよ」
男の子がからかい半分で
「もっと言えることがあるでしょ。ここがこうで美味しいとかさ。表現力がないなぁ」
「だって、美味しいものは美味しいんだもの」
女の子はくすりとした。
男の子は笑った。
わたしもつられて笑った。
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