あなたは死にました。コンティニューしますか?
ナツメユキ
プロローグ
「あなたは死にました。コンティニューしますか?」
「ちょっと何言ってるのかわからないんですが」
気がつくと真っ白な部屋に立っていた。
見渡しても何もない、本当に真っ白なだけの部屋だ。目の前の女性を除けば。
「櫻井祥人さん。あなたは死にました」
「えっ」
目の前の女性は優しくそう言った。
透き通るような白い髪に碧眼。右手に身の丈程の大きな杖。
「私は神です。数多の世界を支える七つの柱の一つ。名をアルカイドといいます」
「は、はぁ……神ですか」
状況について行けずに混乱している僕に彼女は続ける。
「先程も言いましたがあなたは現世で死んだのです。そんなあなたには選択肢が二つあります」
「ちょ、ちょっと待ってもらえます? 僕は死んだんですよね? じゃあここは死後の世界? と言うか何で僕は死んだんですかね? 全く何も思い出せないんですけど……」
「そうです、ここは死後の世界。魂の行方を決める空間。今からあなたの魂の行く先を決めるのです。……ちなみに死因はお餅を喉に詰まらせた窒息死です」
「な、なるほど……って今最後にボソッと聞き捨てならない事言いましたよね?」
今窒息死って言ったよね。しかも餅を喉に詰まらせてって……
「と、とりあえずこれからの事を決めましょう。あなたの選択肢は二つ。一つは記憶も何もかも忘れてゼロから——つまり赤ん坊からもう一度同じ世界でやり直す所謂生まれ変わりか、記憶も肉体もそのままに異なる世界で魔神の王との戦いに身を投じるか」
「魔神の王?」
魔王とかじゃなくて? 魔神て……名前からヤバさがビンビン伝わってくるんですが。
「はい。その世界では魔神の王たちが人々の生活を脅かし、滅ぼさんとしています。それに対抗する術として、その世界との相性の良い魂の持ち主に特殊な力を与え送り出しているのです」
「でもアルカイドさんって神様なんですよね? 自分でチョチョイとやっちゃえないんですか?」
「そうしたいのはやまやまなのですが、どうにも魔神の王たちの結界により直接干渉出来なくなっているのです」
「なるほど。で、僕の魂はその世界との相性のが良いから選択肢が二つあるんですね」
「はい、そういうことです。さあ、櫻井祥人さん。生まれ変わりか異世界に行くか、どちらにしますか?」
これは世間で言うところの異世界転生のチャンスなわけだ。しかも何かしらの特殊能力も貰えるらしい。答えは決まってる。
「異世界に行きます」
「ふふ、そう言うと思ってました。それでは」
そう言うとアルカイドさんは手に持っていた杖で床を鳴らした。
すると、眩い光とともに目の前にガチャポンが現れた。
…………が、ガチャポン?? なんで??
「ではこれを回してください。この中には魔神の王との戦いに役立つ能力が入っています。あなた方人間風に言うならば能力ゲットガチャです。気合を入れて回してくださいね」
「えぇ……」
つまりこれはあれか。どんな能力が手に入るかはランダムなのか。というかなんでガチャポンなのか。あと能力ゲットガチャって何だよ。スマホゲーかよ。だったら十連回させてくれよ。
色々ツッコミたいのを抑え、僕は恐る恐るガチャポンを回した。
「SSR……SSR来い……っ!!」
まあ、そんなランク分けされてるのか知らんけども。
そして出てきたのは禍々しいという言葉が似合いそうなぐらいに真っ黒なカプセルだった。
「うっわ何これ……きもっ」
「うわぁ……うわぁ……」
カプセルにドン引きしていると、後ろで見ていたアルカイドさんも、何故か一緒にドン引きしていた。
「いや、なんであなたも一緒にドン引きしてるんですか……」
「いや、あの……それ……七兆分の一の確率でしか出ない呪いの玉なんです。一緒に作った他の神、国造りの神がふざけて入れた『呪言』と呼ばれるものです」
「クーリングオフ!! クーリングオフで!!!」
何だよ呪言って! このふざけたの入れた国造りの神ってあれだろ、イザナミだろ! いい加減にしろよ!! 桃投げるぞ桃!! 黄泉比良坂に帰れ!!!
「ではそのカプセルを開けましょう」
「ちょ」
僕の言葉を無視して、禍々しい玉を勝手に開けたアルカイドさん。
カプセルの中から黒い
「あなたに与えられた能力は『無限コンティニュー』です。あなたが望む限り何度でも蘇ることが出来ます」
「え、強くない?」
どう考えても強能力だよね、これ。無限コンティニューて。死んでも生き返れるって事だよね?
「そ、それでは……」
アルカイドさんは再び杖で床を鳴らした。
するとガチャポンは消え、僕の足元が光り出した。
「櫻井祥人さん。あなたが十二柱の魔神の王を討ち倒すことを願っています」
「えっ、もう? 言葉とかは通じるんですか? 地理とか異世界の常識とか何もかも不安しかないんですけど!!?」
「言葉は加護を与えるので通じます。常識や地理については追い追い学んでいってください。それでは!」
「ちょ」
足元の光が輝きを増して僕の体を包み込み、視界がホワイトアウトした。
こうして僕——櫻井祥人の異世界の生活が始まった。
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