第4部~計画の最果て~

プロローグ

『全世界!全住民に告ぐ!』


人間界とアーウェルサ。結合が済んだ一つの世界に、結合して尚神で在り続けるエスト・テリッサの声が響く。


『空間の結合が完了した新しいこの世界で。私は、新たなゲームを始めることを、ここに宣言する!』


 世界各地で大きなどよめきが起こった。一体何のために行うのか、今行われているゲームがどうなるのか。

 その疑問に答えるかのように神は続ける。


『人間は、弱い。結合しても、人間はアーウェルサの環境に耐えることはできない。よって、アーウェルサの住民との親睦を深めるという意味合いも込めて、私は、真の結合を果たそうと思うのだ!』


 全ての住民が、動きを止めて神の声を待つ。


『ルールを説明する。現在のコントラクターにはそのままコントラクターとして存在してもらう。ただし、下僕となった人間はすべてリセット。全員がただの人間へと戻る』


『参加権はすべての住民に与えられるが、参加できるのはコントラクターのみ。アーウェルサの住民は人間との互いの合意を得たうえで契約してくれ』


『コントラクターの機能も変更する。人間は契約種と同じ魔力を扱えるものとする。身体能力向上に変更はないが治癒能力はなくなる。今までのコントラクターは充分に注意してくれ』


『行うゲームは―仮想空間での殺し合いだ』


 再度、全世界各地で大きなどよめきが起こった。殺し合いゲームをやめて新しく始めるゲームが、また殺し合いなのか、と。


『よく聞いてほしい。今回のゲームでは、死人は出ない』


『仮想空間内で殺されれば、今まで同様下僕となる。が、下僕の機能を変更する。下僕となった人間及び契約種は普通の住民に戻る。再契約は不可。また、主は仮想空間において、下僕を呼び出すことが出来る』


『コントラクター同士チームを組むことも可能だ』


『このゲームの開催日は暦上の偶数日の午後六時より始める。対戦相手、対戦ステージはランダムだが、事前に告知する』


『仮想空間外の人間界での戦闘を固く禁ずる』


『ゲーム終了は、コントラクターが一チームになるその時まで。ゲームの勝者及びそのチームには、今までのゲームの景品同様。巨万の富を与える』


『詳しいルール説明はコントラクターになったら得ることが出来る携帯端末で確認してくれ』


『説明は以上。全住民の健闘を祈る』


 それ以上、神の声が聞こえることはなかったが、充分だった。

 すべての人間が神の言葉を理解したわけではなかったが、流れ込むようにしてやってきたアーウェルサの住民と契約し、コントラクターになった人間は瞬く間に数を増やした。

 チームを組んでいいと言われれば、そうしない手はない。

 学校の同級生。サークル仲間。企業と言う団体に至るまで、チームを組む者たちは多かった。

 そんな様子を、スクリーンを通して眺める神、エストはそれから目を離さずに背後の人物に話しかけた。

「これで、よかったのかい?」

「あぁ、上出来だ」

「お主に褒められてもうれしくないなぁ。考えてのお主だし」

 背後にいるのはとても賢い男だった。今エストが話したゲームを突然やってきては即座に考えついていた。

 今まで行ってきたゲームを『クソゲー』と評し、クソだったシステムを修正した。本当に死んではつまらないからと、仮想空間を提示。採用した。

 参加権を全人類に与えながらもコントラクターを採用したのも、異世界に興味のない人間を巻き込む必要はないという配慮から。

 あとは、

「アーウェルサの住民と人間が仲良くなればいい。・・・とか考えてるんだろ」

「!?」

 心を読まれたことに驚き、背後を見る。

―いなかった。そこにいるはずの、男の姿が。

「悪いな、エスト」

 再度、背後からの声。いつ回り込まれたのかもわからない神速。

 事の次第は、エストが状況を把握する前に終了する。

「神の座。もらい受ける」

 心臓が貫かれた音がエストの脳内に直接響き、そのまま意識が暗転した。

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